続続続、桜花舞上三夫改め角倉志三夫のサバイバル生活。
尚、本人は旧姓に戻されたことも妻との断絶も知らないまま。
91日目。
満三ヶ月も問題なく過ぎ、
寝袋が作れるようになったものの、作っても使う予定はなく。
94日目。
雨来た。またひと月ぶりくらいの。
やったー安心、のその晩。
・・・。
満足に眠れなかった。
95日目。
降り出した小雨は大雨に、そして久々の嵐になった。
海辺に仕掛けっぱなしの魚の罠は強風に失われてしまうのだった。
その夜
また眠れない。
気分が優れない。
96日目。
どんどん沈んでいく。
そういえば、いつか見た洞窟の、意味不明な書き残しの・・・
あそこに確か「96」という数字があった気が。
いや、だからって、それがなんだというんだ。
怖い。
夜が怖い。暗闇が怖い。
何も掴めない。誰もいない。この島に一人。
だけど、闇が確かにそこにいる。得体の知れない恐怖がこっちを見ている。
◎ 左サイドバー下方のステータス表示
赤くて頭を抱えているアイコンは熱中症か酷く暑いのかと思って水を飲んだり体を洗ったりするくらいの対策をしてあまり気にしていなかったが、よくよく確認したところ過度なストレスを示すものだった。
97日目。
新しい朝が来た。昨日の朝か? わからない。
気分転換に木の彫刻をやったが、単純な削り作業を繰り返していると余計なことばかり考え始め、だんだんと苛立ち、やがて木もナイフも壁に投げつけ、ゴミだけが残った。
滅入って塞いでいてもしょうがない。
遠出してくだもの採集などしたが、さして浮くことはない。
眠れない。
こんな生活が何になるというのか。
さりとてあの会社、あの家に居て、あのままでどうなったものだろうか。
くだらない。
この生活も、この島も、こんな世界、消えてなくなれ。
くそぁーっ!!!
98日目
いつの間にか寝入って、目が覚めたら日が高く昇っていた。
少し前に見た海の向こうの島に向かって泳ぎ出てみたが、とても辿り着けそうにない。すぐに住処に帰る。
仮に辿り着けたとしてそこに救いがあるのか。どんな救いがあるというのか。何があれば、どうなれば俺は救われる。救われたところでどうなる。
くだらない。
無人島生活の孤独、日々を乗り越える繰り返し作業の疲弊、世界と将来への失望に、三夫は心を失いつつあった。それでも手癖のように染み付いた生活ルーチンで生き延び、望まざるとも死を免れ、ただ生きるだけの日々は続いた。
夜は言い知れぬ恐怖にうなされ、ろくろく眠れる夜は来なかった。
◎これ以降、精神ステータスに回復兆候がなく、画面が若干色褪せた状態が続く。
100日目。
日にちを数えることに何の意味もない。
103日目。
その日、無人島調査団のヘリがその上空を巡視した時、野人のような髭面の男が雨に打たれながら海辺に無表情で佇んでいるのを確認したとか。
「死んでいるのではない。確かに生きていた。」との報告だったとか。
104日目。
珍しいものを収拾したが、特に喜びなどなかった。
また嵐か。特に動揺はなかった。
107日目。
また珍しいものを拾った。が、ただの石だった。
ただの石もそこにあるだけ。俺もただここに生きるだけ。
何の意味もなく、その状態がただ続くだけ。誰がそうしたでもない。誰が止めることもない。
何もないことと何が違うだろう。
考え事をしながら手を動かしていて、適当に何かできていた。
109日目。
落ち込んでいる時は、普段食べない美味しいものを食べよう。
妻がいつか言っていたのだったか。違ったか。どうしてだかそんな言葉が頭の中に浮かび、ひとつ料理を作ったが、腹は減っておらず、特に食べる気はしなかった。
110日目。
気晴らしの、しかし大して気の晴れない木彫り細工作業を何度か繰り返すうち、木工スキルが上がった。
それがなんだと言うんだ。
それがなんだと言うんだ。
世界は終わらない。
(この話はフィクションであり、適当に書いています。)
つづく。