BINTA

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「グラスリップ」

dアニメストア見放題。全 13 話。
P.A.WORKS の未視聴作品を観ておくシリーズファイナル。「SHIROBAKO」の前クール、2014 年 7 月期放送。「true tears」、「花咲くいろは」と合わせて『北陸三部作』とされる作品。昨今ニコ生の様々なアニメ配信中に駄作として引き合いに出されるので、少し身構えた感じで観ることになった。
ある夏、海辺の町、幼なじみの仲良し高校生男女 5 人組と、そこに割って入ってきた転校生の不思議な少年による奇妙な恋愛ドラマ。ピーエーオリジナルの恋愛作品では定番となりつつある男女 3 人ずつのグループ恋愛における数角関係の苦々しさと、それを含めた青春の甘酸っぱさが美しい風景とともに描かれるタイプのやつ。「凪のあすから」でそこに『海の世界』という非現実要素を加えたのと同様に、この作品では『謎のイメージが見えたり聴こえたりする能力』が存在する。遠巻きに「Charlotte」に繋がる要素があると言えるかも。
ただその能力が、能力者本人の意図しない不可抗力によるものであり、謎のイメージが意味するところは体験するキャラクター自身でさえ認識できず、一体それはどういうことなのか、という点が主題でもあるので、単純な能力者ものにカテゴライズされる作品ではない。でいて、その主題の理解が結構難しい。最後の二話がとても重要なポイントであることはわかるけど、その能力、というより現象が何だったのかは理解できても、その後のラストの意味がちょっとわかりにくかった。
また、全体的にもこれといった盛り上がる出来事、例えば「true tears」や「花咲くいろは」や「凪のあすから」でのお祭り、「TARI TARI」での合唱コンクール、「SHIROBAKO」でのアニメの放送といった、劇中でのイベントの成否が物語の結末に関わるようなことが無く、どこを目的地として話が進んでいるのか掴みづらいので、主要キャラたちの関係性や心の動きや恋模様をたのしめないと、駄作とされてしまうのかな、と思った。
個人的には、「のんのんびより」にも似た間を取るシーン構成や言葉少なめな台詞と表情だけで心情を語る表現は、小津安二郎 とか昔の名作邦画のような手法に見えて好きだったし、11 話の丸々一話使っての『唐突な当たり前の孤独』のイメージを別世界として描く表現もおもしろく、そこから振り返れば過去話数や他の場面での『未来のかけら』の意味もなんとなく理解できたので、ラストシーンをどう受け取るかという点以外では駄目なところは無かった。当然、理解できた気になっただけだとは思うけど。
あとは、絵的にはほとんどのシーンで画面端が光に褪せているのが特徴的で、それにはどういう意味があるのか、ずっと気になった。色白病弱メガネキャラの 幸 は「Another」の 鳴 に似て存在感が異様で、その台詞の端々からは『未来のかけら』について 透子 や 駆 よりも知っている風なニュアンスが感じられたりしたので、色褪せたような絵のカットは 幸 の視点と何か関係があったりするのでは、と勘繰ったりもした。結果、特に何もなかったけど。
人によって色んな見方ができる作品でもあるのかな、とも思った。ラストが曖昧な感じになっているのも人それぞれの解釈に委ねたものか。
この内容でなぜ酷評を受けるのか全然わからなかったけど、きっとアクションや作画の動きを重視するようなアニメらしいアニメを好むアニメファンには向かない作品なんだろう。個人的には少なくとも「Angel Beats!」よりは全然たのしめた。



これで P.A.WORKS 制作元請けのテレビアニメシリーズはひと通り観終えた。
true tears」から「SHIROBAKO」まで、好みをランク付けするとこんな感じ。

1. SHIROBAKO
2. true tears
2. 花咲くいろは
4. TARI TARI
4. 有頂天家族
6. RDG レッドデータガール
6. グラスリップ
6. 凪のあすから
9. Another
10. CANAAN
11. Angel Beats!

SHIROBAKO だけ 5 周ぐらい観ていて、且つ最初に観た作品なので思い入れがちょっと格上になっている感はある。贔屓とも言う。
2 〜 6 位の作品は全部僅差と言っていい。全部盤を買い揃えたいくらい。凪あす が低めなのは、2 クールはくどかったな、と。Charlotte は最終回前の現状、5 位には入る感じ。