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「おおきく振りかぶって」

水島努 監督作品、2007 年放送。全 25 話 + 番外編 1 話。
少し前にdアニメストアにて配信開始になっていて、やっと観た。
野球部が新設された高校、一年生ばかりのその野球部に入り投手に抜擢された小心ベソかき投球大好き少年と、その新設チームの成長と活躍を描く高校野球アニメ。ひと言でまとめると、「弱虫ペダル」の野球版。製作・放映はこちらが先なので、「弱虫ペダル」が「おおきく振りかぶって」の自転車版、と言うべきだけども。自分の実力をわかっていない主人公が、凄い仲間に恵まれて、仲間のアシストを得て秘めたる強大な力を発揮して全国優勝クラスの強豪チームと対等に戦う、っていう全体の流れがだいたい同じ。ガルパン もそんなもんであり、スポーツやら色んなバトルものにはよくあるパターンと言える。でその定石に則っているもの、と言える。
先に観た「弱虫ペダル」は毎回回想を入れまくって 500 メートル進むのに4話かかったりすることがあって、自転車レースのアニメなのに全然進まねえっつうか振り返ってばっかりでスピード感もクソもとか馬鹿馬鹿しく思えて、そういうところが嫌いだった。似た作風のこの作品ももしや、1イニングいや1打席いや3球投げるのに1話使ったりするのでは、という危惧があったのだけど、さすがハイテンポの 水島努、そんなことはほぼなく、時には1イニング数秒ですっ飛ばすこともあるほど。原作準拠なのかな。1話で1イニング前後しか進まないこともあったものの、そこは試合時間が長引くことが当たり前の野球の性質上しかたないかな、とも思った。
スポーツが嫌いで野球も基本ルール程度しか知らない自分にとっては、投手が一球投げるまでの間に、監督、捕手、打者、次の打者、そして投手自身、その他周囲の関係各位が配球についてあんなに色々思考を巡らせるもんなのか、ということがわかって、それなら1試合一球一球が多少長くなるのもしょうがないかもしれない、とも思った。この作品でもって初めて、野球の見方や観る楽しさが僅かながらわかった気がする。だからって今更野球好きには成り得ないので、こんなアニメが少年期にあったらよかったのにな、と思う。いや、有ったのだろうが観ても理解できなかったんだろうな。理解できるのうみそが少年期にあったらよかったのにな、と思う。

捕手・阿部。こいつの洞察力は高校生じゃない。人生二周目のひとだろう。ある種西浦高校野球部およびこの作品がおもしろく成り立っているのはこいつの洞察力がすべてと言える気がする。女監督もでっかいおp大したひとだけど、その力はチームを支えているだけ。三橋 の投球と試合のコントロール、ある意味全体のゲームメイクも 阿部 の手腕によるところが大きいと思った。つまり、投手のアニメで投手戦を描いているように見えて、実質捕手の重要性を見せている作品、のようにも見えた。
四番打者・田島。話の基盤をつくっているのが 阿部 なら、ドラマとして盛り上げているのはこいつ。こいつだけではないけど、所謂おいしいところを担うのはこいつ。キャラクターの仕様上、主人公の 三橋 を食ってしまっているけどそれもやむなし。
女監督・百枝。なんでこんなキャラなんだろう。ホモ作品に寄らないための配慮、つまり読者・視聴者サービスなのか。野球漬けの十代高校生の中にこんな女は、毒だろう。どくどく。なんでこの子供たちは平気なんだろう。平気でなかったとしてもそんなシーンは野球漫画には不要か。

2クール全 26 話中、前期はチームが出来上がって練習試合やって夏の地区大会開始まで。あんまり野球をやらない回も続いて、なんとなくそういうところ、努作品らしいな、と思えておもしろかった。後期は地区大会第一試合・VS 桐青高校との戦い。9回決着した後エピローグっぽい後日談の回と、番外編となる武蔵野第一高校の話で終わり。9回表、田島の決勝打には熱くなったし、裏最後の最後の 三橋 の振りかぶっての投球から 泉 が取ってバックホームでアウト・ゲームセットまでの一連の流れには感動するものがあった。ガルパン TV 版最終話の姉妹対決の決着のシーンと同じ感覚。そういうところの見せ方、やっぱり 水島努 すばらしいなあ、ずっと前からすばらしかったんだなあ、と思った。
さてまあしかし、主題歌が駄目だった。特に後期 ED がもう、筆舌に尽くしがたい気持ち悪さで参った。

2 期もそのうち観る。