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「電脳コイル」

dアニメストア、全 26 話。NHK、2007 年放送作品。
インターネットを利用した仮想空間を現実の生活空間に重ねて見聴きし操作することができる「電脳メガネ」という一種の IT ツールが一般的に普及した近未来の、地方都市のごく庶民的な子供たちの話。戦争ごっこ、宝探し、または自由研究の要領で、電脳技術を駆使して遊び学び、そんな中で仲間割れ、いじめ、淡い恋などによって、生身の人間としての感情も様々に揺れ動く小学校高学年の少年少女たちの姿を描いた作品。
ネットの噂によると、とてもおもしろい作品だそうです。とのことだったので、いつか観てみようと思っていた作品のひとつ。観てみたらば、噂通りのおもしろさ。独特の専門用語、既に存在・流通しているネット用語 IT 用語がたくさん出てきて理解しづらい話も少しあったけれど、「電脳」というまさに非現実でありフィクションでもある概念を、ごくごく日常的に、当たり前にある存在として位置づけて、そんな世界で暮らす子供たちは、人々は、どんな事を起こすか、どんな考えを持つか、というところを深く考えて作られていると思った。その一方でアニメ的ドラマ的なストーリー構成、脚本の練り方、伏線の張り方も序盤から周到緻密に計算されていたようで、結末に至るまでほとんど緩むところがなく、明かされるべき謎は恐らくすべて解明されそれなりのカタルシスももたらされ、その上で全体としての空気感や温度は変えない爽やかな終わり方まで、とても心地の良いものだった。
教育テレビ放送作品らしく、主題としては子供世代における「ネットとの向き合い方」や「友達とは何か」とかそういったことを問いかけつつ、暗に道徳観や人生観、死生観、ひとつの世界観などを説くような語り口もあり、幼稚な所謂「子ども向け」とは異なる本来あるべき「子供向け」の作品にもなっている、でいて大人の鑑賞にも堪えるというのがすごいとも思った。最後の方は、「子供向け 攻殻機動隊」とか「和製マトリックス」とかそんな風に感じたところもなくはなかったけども。
そういったこととは全く別に、作画監督・原画のスタッフに、今まさに「フリップフラッパーズ」で自分にとって大注目の『押山清高』の名前があり驚いた。後半話数に至る頃には、この作品は フリフラ の作風に通じるところがあるような気がしないでもないとも思った。フリフラ 6 話:いろ先輩 と おばちゃん の回なんかまさに、話は全く違うけどアニメ的表現として相通ずるものがある気がする。他にも、伊東伸高、谷口淳一郎、一部話数で 黄瀬和哉石井百合子 など、自分が好む作品で見かけたアニメーターの名前が原画陣に入っていて、なるほどそりゃおもしろいわけだと思った。
作画が良いのはもちろん、CG を多用したと思われる電脳的表現の数々もおもしろかった。特に イリーガル との接触などによって生体や物体にノイズが走るのを電子画像の画質劣化的に表現するのは、今更ながら斬新だと思った。恐らくあまりに独特すぎる表現ゆえ、安易にパクる作品がこれまで出てきておらず、故に自分も今まで観たことがなかったのだと思われる。同様に、電脳コイル 現象によって電脳体が分離してしまった本体の人間の身体が暗くなり「NO DATA」と表示される表現も画期的。映像作品ならではの面白味がこれらの表現に溢れていると思った。が、サッチー の攻撃やビームでの爆発は悪い意味でアニメ的だと思った。子ども向けだと思った。また、最終二話における新旧 サッチー 空中戦からの タマ の自爆的墜落 → 大爆発!!などは、悪ふざけが過ぎると思った。なぜこんな大詰めで笑わせるのか、と。
声優方面では、たった十年足らずで主力声優って全く様変わりしてしまうもんなんだな、と思った。お笑いやふつうの芸能界と違い、第一線の人々の世代交代が早いのは新陳代謝としては良いことなんだと思うが。これは NHK 放送作品なので一線級深夜アニメ枠の流行声優陣とはまた毛色の異なる方々を採用したところもあったろうけど。個人的な思い入れにおいては、エクセル 小林由美子 がちょいキーキャラの アキラ をやっているのがよかった。あと デンパ 役のひとは、このひとこそ 大山のぶ代 の後を継ぐべきひとだったのではないかと思った。
放送から既に十年、もはや一昔前の作品だけど、今更ながらかなり気に入った。ブルーレイボックスは作中で言うところのお年玉二年分ほどで買えるらしい。が、一部限定発売された方の特典映像が付いていないとか。またいつか買うものリストが増えた。