BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

夏アニメ終了1

最終話まで観終えた順に、感想以下。

天晴爛漫!

大変に残念。1話ではそこそこわくわくしたが、それがピークだった。大陸横断レースという主題など大半あってないようなもの。レースものなのに本文が何かにつけて止まって進まない。実際走ってはいるが、走ってどこかで止まるまでのシーンはだいたい中略される。何がしたいんだ。
レース以外の部分、制作陣的には恐らくそっちが本題なのだろうが、そっちにしてもコメディ風味や人情話風のエピソードで飾るばかりで中身がうすっぺら。大事件を乗り越えたりだのゴールの瞬間だのも感動なんて何もない。心がピクリとも震えない。何もない。
色とりどりの登場人物たちで賑やかなアクションものをやりたい、という熱が空回りで伝わってくるばかりで、肝心の話がひとつも面白くなかった。良く言っても大味な凡作ハリウッド映画程度。西部劇と侍活劇とカンフーと、常識外れな凶悪犯と、色々と詰め込みすぎだと思った。詰めたはいいがどれも生かされていない。むしろ殺しあっているきらいすらあった。
ただこんなアニメっぽいアニメが作りたかっただけなんだろうか。或いはファミリー層向け、子供向けと捉えればまあこんなもんかとも思えるが。P.A.WORKS の看板背負ってこんなもん程度とは。

監督の橋本昌和ってひとは、かつてピーエー最低作品の烙印を押してやった「ハルチカ」を手掛けていた人だったはずで、たぶんこの監督の作風が全く趣味に合わないんだろう。
SHIROBAKO」でハマった P.A.WORKS だが、「SHIROBAKO」(TVシリーズ)より後の作品はひとつも期待が叶わなくて嫌いになりそう。どうぞどうぞとの声が聞こえる。


富豪刑事 Balance: UNLIMITED

ノイタミナ枠のわりに予想以上に良かった。かなり好き。実写ドラマ深田版とは全然別物だった。
作画、脚本、演出、声優、すべてが熱すぎずクールすぎない良い温度感の刑事ドラマだった。神戸大介の声優はキャラ絵にハマりすぎていて、言葉少なでも見入るものがあった。宮野真守がコメディノリなんだけどはっちゃけていないのがおもしろかった。
中盤から神戸家の話になっていったのは意外だった。正直、実写ドラマ版同様に全話一話完結のオムニバスが観たかったとも思う。それでも成り立つキャラクターが揃っていたと思う。
富豪が大胆に金を掛けてバカバカしく事件を解決するという奇抜さのわりに、バディモノであったりとか、主人公のルーツが結末に関わるとか、庭師が隠密とか、要所にはベタな要素が配されていたのも可笑しかった。それらによって分かりやすく軽く観ていられたところもあるかも。
あと、ヒュスクが良い。ナビキャラとしても製品として見ても良い。
ぜひオムニバス形式で続編をやってほしい。ああ、でも何人か死んじゃったんだったか。


宇崎ちゃんは遊びたい!

キャラクターにクセがあり、だいたいはそのクセを活かして話を転がし笑いに繋げるタイプの、ある種オーソドックスなコメディだった。
脚本や演出によってはつまらないものになることも少なくないので、最後まで飽きずに観られたこの作品はそれなりに良かった方だと思う。
登場人物を最小限に抑え、話や展開にほとんど無駄がない(内容自体は無駄話ばかり)からこそ、良い感じに観ていられるんだろう。この作品に限らずコメディ系の良い感じの作品はだいたいそうなのかもしれないが。
ここが好きってところもなく、この作品全体も特に好みなものではないけど、2期決定とのことで、やるなら観るかも。


デカダンス

攻殻機動隊マトリックスの世界観にエヴァ的だったりな要素を加えて、ひとひねりして独自の作風っぽくしたような、見せかけのもの。期待外れでもったいない作品だった。
終末世界系を思わせる1話は良かったが、押山清高デザインのゆるサイボーグたちが出てきて世界観の全貌が明かされる2話で印象が大きく変わり、次々どこかで見たことのあるエピソードが重ねられるうち、物語中盤に至る頃にはただ「マトリックスっぽいアニメ」というところに落ち着き、以降その印象が最後まで覆ることはなかった。
その既視感からくる残念な印象さえなければ、カブラギデカダンス化前後の流れからの終盤はもっと感動できたのかもしれないが、結果的にはいまいちだった。
良いところは幾つかあった。カブラギとナツメのキャラクターは好みだったし、デカダンスという巨大兵器都市もおもしろいと思った。自分の趣向で言えば電脳世界要素が要らなかった気がする。それが有って尚且主題であるがために、存在や共存どうこうを語り始めるとマトリックス(特に3作目エボリューション)と同じものに見えてくるので、あーその話もう他で知ってるよってことで結末がだいたい読めてしまいつまらなく感じるばかりだった。


この作品に限らず、どうも既視感があるとか何かに似た作風だと感じてしまうと楽しめなくなる。「オマージュ」とか「~を踏襲した」とか明言されていればまた感じ方も違うはずだけど、「私らが考えたオリジナルでっせーどうでっしゃろー」なんて得意気にやっているように見えるのが(実際どう思って作っているかは知らないが)、同じジャンルに当たる先行作品を知っていると気に食わないのかもしれない。
人によっては、似た作風、同系統、同ジャンルの作品だからこそ好き、そのジャンルならなんでもいける、そのジャンルだけが好き、だから先行作品に似ていても全然大丈夫で楽しめる、という人もいるだろう。
自分はそうじゃない。なんなら、似た作風で先行作品があることを知らなかったならそっちをちゃんと知っておきたい。その結果先行作品の方を気に入り、後発のそれを駄作と切り捨てるようになることもある。二番煎じ嫌い。
でも本当に何にも似ていない作品なんて滅多に無くて、出ても来なくて、それでも、何かに似ているところがあってもおもしろいオリジナリティを感じる作品もあって、その場合の二番煎じは全然許容できてしまって、褒めたりハマることまであったりして。その違いってなんなのかと突き詰めると、それは結局制作するひとの意思や意志や意図次第なのだと思う。
あと、いつものお決まりの、捉え方次第。本当につまらないのはおまえ自身。


魔王学院の不適合者

こういうのをなんて言うんだったか、とにかく徹頭徹尾「俺TUEEE」というやつ。言わばズルいんだが、そのズルの、この作品で言えば魔王の魔法の使い方、効力の説明や理由付けが多少屁理屈じみていてバカバカしいのがこの手の作品の魅力。
特にこの作品に限って言えば、魔王の力を増幅させるために「ファンユニオン」と称される8人の少女にゆるい合唱をさせるところが良かった。知名度低いと思われる若手女性声優が微笑ましい歌唱力で歌い上げる「アノス様応援合唱曲」は、物語後半において定番化してきて楽しみにもなっていた。魔王の援護に合唱、その発想だけでもおもしろい。それが画として、アニメとして見せ聴かされると、正義 憎悪 聖 悪 光 闇 人間 魔族なんてのをややこしく語る本筋の論点がどうでもよくなる。こんな合唱あったら魔王側贔屓にもなる。おまけに最終話のみ OP 曲が本来のバンドのボーカルでなくアノス様歌唱というサービス。すばらしいねほんと。
話の結末も、まーここまで何でもありならどうやっても磐石だわなという決着。肩透かしでもなく予定調和と言えば予定調和、それはつまらなくもあるけど、丸く収まってきれいな締めかと思ったら、さすがこの制作陣はわかっている。最後の最後はアノスの両親オチ。終盤、何か欠けていると思っていた最後のピースをきっちりはめて終わってくれた。
魔法バトル方面のことは興味ないけど、何がおもしろいかという点でとても感覚の合う作品だった。