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夏アニメ終了2 : GIBIATE

これは当たった。かなりの大当たり。危険と分かっていて拾い食いしてまんまと滝のような下痢をしたレベル。1話の時の感想でもだいぶツッコんだつもりだったけど、その後も毎回ツッコミどころが盛りだくさんで最終話も笑いがこらえきれないくらいに酷かった。
要点を挙げるにも色々あるが、何から書いたものか。

  • 作画が残念

もはや言わずもがな。こういう画風の作品だったということでしょう。それは1話2話で諦めがつく。諦めがつく分、そこで見切る視聴者も多かろう。でもずっとそんな画風なので、作画崩壊というようなことはなかった。あったのかもしれないがそれに気づけない、気づかせない作画だった。
一方でジビエ=怪物はすべて CG によるものなので、手描きの画風との違和感からくる残念さもあった。怪物のデザインが「それでいいの?」というようなものだったのが、違和感を和らげるのに一役買っていた気がしないでもない。

  • カット割りが変

日常場面であろうと緊迫すべきバトル中であろうと、何かあるたびに「なに?」、「んー?」、「おおっ」とか、歌舞伎か能かというリズムでいちいち感嘆描写が挟まれる。しかもそれを言うキャラの顔は常に画面からはみ出るほどのドアップ。喋っている複数のキャラを同一画面に入れてモブ的に言わせとけばいいのに。
バトルもバトルで、剣の一振り、動きのひとつひとつの演出が物凄く大げさ。しかも妙にもっさりとした動きの作画、その上にスローな演出やストップモーションが入るので、動きを感じるのは声優の演技だけで音声が浮いて画と噛み合っていない。で、やっぱり画面からはみ出すほどのアップでの攻撃ばかりで何をやっているのかわかりづらいことも多かった。

  • テンポが残念

芝居の間が常に極端なくらい間延びする。日常会話ですらもたつきを感じる。バトル中でも前述の変なカット割りと共に間延びがあり、その度にこの作品の痛々しさがほとばしって笑わされる。しかも前後のストーリーや台詞がその笑いへの振りになってしまったりするから余計に。
芝居以前にカットごとシーンごとの間、編集の間も原因にあるだろうし、恐らく絵コンテ段階で既にこの間が考慮されていると思うので、演出者、監督の間、そのひとがこういうテンポ感なんだろう。
一時はヨシナガ博士役の池田秀一の老いから来る滑舌のもたつきに配慮して、それに全登場人物すべての台詞のテンポを均した演出なのかとも思ったが、それなら配役を変えた方が作品にとってはいいだろうし、池田氏もそんな配慮をされるのは嫌うだろうし。
そんなテンポ感もこの監督の味と言えば味なんだろうが、あんまり味わいたいものではなかった。

  • 話がヤバい

1話の出落ち感が霞むほどの展開が、根強く観続ける視聴者を笑いの渦に巻き込み、やがては惹きつけてやまなかった。大げさに言えばそんなエピソードの連続だった。

    • 地球にジビエウイルスという菌が現れ、感染した人間は怪物(ジビエ)化
    • ジビエが他の人間を襲い感染拡大、世界滅亡&人類存亡の危機
    • 日本の元墨田区だった地域に生存者たちの集団
    • その中にジビエからサンプルを取ってウイルスを研究する博士
    • なぜか突然、戦国時代から凄腕の若侍と忍者がタイムスリップ
    • さらに大入道のような豪腕の坊主もタイムスリップ、仲間入り
    • 他のジビエとは異なるスマートな強敵も登場、わりとあっさり退場
    • 次々スタート時の仲間たちが死んでいく中、女性警官が仲間入り
    • なぜか突然、やくざな連中が登場。ジビエとは別の争いの種。
    • やくざの親分は女性警官の父親で、二人の確執にクローズアップ
    • なんだかんだ半和解状態となりやくざ連中と共闘
    • 主人公センスイ、連闘による疲弊で終盤まで寝込む
    • そんな中、ヒロインの母がジビエ化、大入道が戦死
    • いつか追いやったはずの強敵が再登場したりで、生存者どんどん減る
    • 博士が衝撃の告白「私はこの星の人間ではない」
    • 突然の宇宙人要素、ジビエウイルスは博士の手によるもの(知ってた!)
    • 例の強敵は博士の元恋人 → 主人公らが既に殺害済み → 逆恨み
    • 恋人を失い母星に戻る術もなく、博士やけくそで自らジビエ
    • ラスボスとなった博士が仲間だった主人公一行に八つ当たり
    • 主要キャラだった女性警官あっけなく死、やくざ子分たちも次々死
    • 「化け物呼ばわりはやめろ」などと言いながらラスボス第二形態に
    • センスイらのタイムスリップの原因はヒロインが流星に願ったから
    • ヒロイン自責に苛まれる中、凶悪化したラスボスに父やくざが特攻自爆
    • 元凶は倒したが、センスイ傷つきウイルス感染疑惑を残して終わり


天晴爛漫やデカダンスもやりたいこと要素詰め込みすぎからの空回り感は酷かったが、この作品はまたそれらとも違う。ウイルスとかタイムスリップとか宇宙人とか、かなり規模のでかいことを入れ込んだ挙げ句の最終的な理由が、個人の怨恨に収束するっていうのは可笑しくてしょうがない。しかも勝手に恋人連れ込んで勝手に暴れさせた結果当然のように倒されて勝手に逆恨みのやけくそ虐殺。
宇宙人なりのロマンティックで破滅的なラブストーリーエンドなのかと思ったらそれは関係なくて、感染疑いの傷を負った主人公の侍と健全に残った忍者とヒロインが別々の道を行き、やんわりおれたた的エンド。



以上の点をまとめて簡潔に一言で感想を言うなら、ダサい。
少なくないアニメファンが一目見て同じように思うような気がする。でもダサいからダメだとか、カッコいいから良いとはならない。ダサいけどそこが良い、という感覚もある。ひねくれとか物好きとか言われる感覚だろうけど。
いや、間違ってもこの作品が「ダサいけど良い」とは言わない。良くはない。でも面白かった。面白がれた。

あと、たぶん誰がどう感想を書こうともこれくらいツッコミポイントに触れざるをえなくなると思う。それはむしろ制作側が狙ったことなのか。でもそんなネタアニメを狙うのだとしたらもっとうまく作るような気がするし、上述の奇抜なようで王道なようで構成ちぐはぐなストーリーや、冷静に見ればまあまあまともな性格をした登場人物たちからは、ふざけて作ったような印象は受けなかった。
ただ不器用なだけだったという感じ。もっとできる制作会社やスタッフが手掛ければこの痛々しさは無かっただろうけど、さてそれをこの作品のように楽しめたかどうか。
もちろん「楽しめた」は「面白がれた」という意味で、侮辱的な言い方ではあるけど、手法やクオリティーはどうであれ、結果的に全話観させるだけの映像作品としての力が、この作品にもあったのは確かだと思う。