BINTA

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虹色の湖

アマゾンプライムビデオに先日追加されたドリフターズ主演映画の「全員集合!」シリーズ、全16本。1960 ~ 1970 年代制作のこれらは、衛星放送では近年でも観られたらしいが商品化は VHS 時代で止まっており、ブルーレイはおろか DVD にも LD にもなっていない代物。
要は需要が無いってことで、ドリフターズ関連の話題でも何らの評判も聞かないのでその程度のもの、映像作品としての価値の程度も知れたもの、ではあるのだろう。
この度配信にこぎつけたのは、悲しいかな皮肉にも、やはり志村けんの死がきっかけとして無かったとは言えないだろう。大半は志村加入以前、荒井注在籍時の作品なんだけど。

そこらへんの事情はどうでもいい。
それはそれ。世間はそれ。
自分にとってはこんなに有り難いものはない。
長らく待ちわびたのだ。十年程度だが。
そんなドリフの映画に興味を持ったきっかけ、昔どこかに長ったらしく書いたことがあったと思い出し、掘り起こした。

ドリフトデイズ1」 / 「ドリフトデイズ2



そんなクソ長文もどうでもいい。
そんな経緯があり、このたびこのドリフ映画シリーズを観た感想を一作ずつ書こうとも思ったのだけど、1作目を観て気が変わった。

1作目「なにはなくとも全員集合」。

なにはなくとも全員集合!!(第1作)

その内容もべつにどうでもいい。語るべき感想はなかった。

しかしこの中で見入る点がひとつ。主に前半にちょっとだけ出てくる、一見して美人の女性がいる。調べたら、「中村晃子」という当時のアイドル的タレントさんらしい。他の作品のどこかで観たような気もするけど、まともに存在を認識したのは今回が初めて。
半世紀以上前のこの時代には不釣り合いな、今現代にこのまま出てきても古臭く感じなさそうな、物凄い可愛さ。目にした直後から気になって気になって、映画本編もそっちのけ、観終わらないうちにスマホでその方のことを調べた。


代表曲「虹色の湖」


この動画を観て、完全にやられた。しびれた。こんなひとがいたなんて、こんなかっこいい歌声を聴かせていたなんて。久々の脳天撃たれる衝撃。
しかし悲しいかなその曲、このサブスク時代に配信には無い。サブスクでない単曲配信もアルバム配信もない。その曲どころか、中村晃子の楽曲は一曲も。CD ならまだ買えるが、自分が欲しい初期の楽曲のみで固めたものはない。あっても限定版で既に廃盤。
なにもかもが遅かった。


しかし何も買わずにいられず、中村晃子のベスト盤の適当な一枚を購入。
聴いたら「虹色の湖」以外も同じ調子の、GS 風味を醸す良い塩梅の歌謡曲でとてもよかった。

このくらいの時代の日本の音楽は、今と比べて技法や技術が未成熟な面があるし、演歌や唱歌がベースだから、例えば主メロの譜割ひとつ取っても、ダダダダとなにか機械的に畳みかけるばかりの最近の楽曲では絶対に聴けない、古くホコリかぶったからこその意外性があってとてもおもしろい。
歌唱表現の機微も、録音や編集の技術に頼れない分、すべては歌手自身の技量、喉と才能によるものであって、ビブラートの具合や音程の取り方にもその歌唱能力の凄みが感じられて、とても聴き応えがある。曲が短いのもいい。


酔狂にもほどがある。とも思う。やはり生まれてくる時代を間違えた。