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映画全員集合シリーズ(その2)

アマゾンプライムビデオの見放題のザ・ドリフターズ主演映画のシリーズについての。続き。9作目から最終16作目まで。ひと通り観た。



「祭りだお化けだ全員集合!!」
1972 年の9作目。有名料亭の板前長が急死、そのポストを強引に奪った味音痴のいかりやが、店の娘を目当てにろくでなし四人と共に料亭をやっつけ運営。瞬く間に傾いた料亭をどうにかしようと周囲は手を尽くし、ドリフは女を追っかけ、いかりや VS 四人で化かし合い殺し合う。
テレビの全員集合が番組史上最高視聴率を取るのがこの後 1973 年4月、まさにドリフ人気が最初のピークに向かう頃の作品。儲かって五人とも歯列矯正したのかきれいな白い歯並びが目につく。特にいかりやの前歯のきれいさが気に障るくらい気になった。
ヒロイン林美智子、仁科明子。レギュラーだった左とん平は出演しておらず、志村も引き続き不在。

祭りだお化けだ全員集合!! (第9作)

祭りだお化けだ全員集合!! (第9作)

  • 発売日: 2020/11/01
  • メディア: Prime Video



「舞妓はんだよ全員集合!!」
同じく 1972 年 10 作目。忠臣蔵パロディからの幕開けに今回は時代劇かと思わせて、OP タイトルが明けると時は現代(公開当時)。京都を舞台に、芸者小屋を営む『近藤勇の孫の孫』こといかりやが、鞍馬天狗西郷隆盛などの子孫を自称するろくでなし四人と共に、悪徳金貸しに追われる少女を匿って一悶着。五人が再びおぞましい芸妓姿に。
ヒロイン吉沢京子光本幸子大信田礼子。歌唱出演は天地真理
今回の悪玉は芦屋雁之助。後世「裸の大将」のイメージしかなくなった御大が、その真逆のやくざ者の役。ドスを効かせながらの軽妙な関西弁ですごみつつちゃんとコミカルさもある演技は、ドリフとの絡みというレア度もあって観ておいてよかった。山下清以前はこれが標準雁之助だったんだろう。

舞妓はんだよ全員集合!! (第10作)

舞妓はんだよ全員集合!! (第10作)

  • 発売日: 2020/11/01
  • メディア: Prime Video



「チョットだけョ全員集合!!」
1973 年 11 作目。ヤブ医者いかりやとその助手たちが、会津の富豪老爺とその養女になるかという町の娘を巡って、富豪の息子をだしにその財産を狙うやくざ者たち相手に一騒動。インキチ医術でやっつけ解決。無免許医、不衛生な個人診療所、患者の拉致、職員への虐待など、ネタとはいえ今日倫理的に笑えない点が多い。
11 作目にして初めていかりやの「オイッスー!」、オープニング曲に「会津磐梯山(エンヤーコラヤ)」、加藤のお巡りさん(二役)、話と関係なく唐突に繰り広げる「チョットだけヨ」と、ドリフの代表作と呼べる定番ネタが登場。
ヒロイン小鹿ミキ。歌唱出演は今作も天地真理。二作ぶりに左とん平がカムバック。イケメン枠は寺尾聰。ドリフにめちゃくちゃされる富豪のじいさんに益田喜頓

チョットだけョ全員集合!! (第11作)

チョットだけョ全員集合!! (第11作)

  • 発売日: 2020/11/01
  • メディア: Prime Video



「大事件だよ全員集合!!」
同じく 1973 年 12 月公開の 12 作目。インチキ探偵社のいかりやが助手の仲本、ラーメン屋の荒井と高木、脱走兵の加藤と共に、大学教授の破廉恥を探るうち美人女学生と出会い、土佐清水・足摺岬の港の危機に巻き込まれ、油田目当てに海底火山の爆破を目論む悪徳業者一味と馬鹿し合い。
劇中、伴淳三郎が悪人に対して賄賂っぽく山積みのトイレットペーパーを差し出すなど、オイルショックの時世を反映した演出が見られる。
翌 1974 年 3 月をもって脱退した荒井注にとって最後の映画参加作品。だが特別荒井がフィーチャーされることもなく、話の大筋は概ねいつも通りの構成。荒井の後任メンバーの志村健も出演。ドリフ6人が共演する唯一の映画作品だが全員が画面に揃うシーンはない。
志村はちり紙交換屋として3シーンに一瞬だけ出演。志村康徳時代は一切台詞がなかったが、ここでは後年お馴染みの声が聞ける。また学生役の諏訪園親治ほか、志村以外のドリフ見習いも出演している模様。
ヒロイン松坂慶子が可愛い。歌唱出演アグネス・チャンはおぼこく芋っぽい。くそ生意気にもサビのボーカルがダブルになっていて、こんな時代の映画音声なのにヘッドホンなしで聴いていても耳惹かれる倍音効果が小憎たらしい。

大事件だよ全員集合!! (第12作)

大事件だよ全員集合!! (第12作)

  • 発売日: 2020/11/01
  • メディア: Prime Video



「超能力だよ全員集合!!」
1974 年の 13 作目。インチキ易者いかりやと記憶喪失の少年加藤が、焼き鳥屋の高木、不動産屋の仲本志村と共に、加藤の記憶を戻そうとしたり阻止したり。加藤は秋田の地主の息子で、そいつを探して上京した姉や、地主の山の権利を狙う悪徳易者教団らも加藤を巡って右往左往。
超能力と言っても「スプーン曲げ」の知名度が精々という時代。ここに出てくるのは占い、予知、あとは演芸的手品の類。全体的にドラマ「トリック」の芸風に近い。
志村正式メンバー昇格後初の作品。表記も「志村けん」としてドリフメンバーの並びで三番目にクレジット。だが、まだ世間的に受け入れられていない時期、志村けんらしい芸風も固まっておらず、台詞も少なくずっと仲本に着いて回る金魚のフン。登場シーンでは仲本から必ず一度二度殴られ、中盤には仲本といかりやからただのいじめに等しい虐待を受けたりもし、笑えない。とりあえずサンドバッグとして出して顔を売ろうという感じ。加藤とインチキカンフー対決するブルースリー諏訪園親治の方がおいしい役に思える。
ヒロイン長山藍子、秋谷陽子、榊原るみ。イケメン枠は夏八木勲。歌唱出演はフィンガー5。もろにジャクソン5なソウル歌謡曲で、ドラムのフェイザー掛かったエフェクト処理が時代を感じさせる。

超能力だよ全員集合!! (第13作)

超能力だよ全員集合!! (第13作)

  • 発売日: 2020/11/01
  • メディア: Prime Video



ザ・ドリフターズの極楽はどこだ!!」
1974 年 12 月公開。花輪屋の商社に務めるいかりやは早くに妻を亡くし、大学浪人で穀潰しの息子と娘に日々頭を悩ませている。ある時スナックの美人ママに一目惚れ、ママは金に困っており二百万を用立てることになるが、バンド活動を始めた息子が親に内緒で会社に退職金百万の前借りをしており・・・といった話。
以下、感想が長くなったのでよそに書いた。割愛。

booklog.jp



ザ・ドリフターズのカモだ!!御用だ!!」
1975 年公開。冴えない中年刑事いかりやを中心に展開する刑事ドラマ。軽犯罪を繰り返すチンピラ加藤が悪党から盗んだ宝石を巡って、いかりやとその義弟で部長刑事の仲本、後輩の志村たちが、元宝石鑑定人のラーメン屋高木を介して悪党と加藤の取引現場を押さえ、最後はオールキャストでパイ投げ大会。
前作同様タイトルに「全員集合!!」は付かず監督も替わっているが、人情ものに寄った前作に比べれば、通算 15 作目としてシリーズらしいとも言えるコメディ色が強い内容。いかりやは前作並みにテンションを抑えた俳優面を見せるものの、他のメンバーはそれなりにドリフらしいノリ。志村は依然静かな脇役に徹し、いかりやに牙を剥くのは専ら仲本の役。
ヒロイン倍賞美津子? メンバーの誰一人として女の尻を追っかける展開がほぼないので明確なヒロインは居ないとも言える。ほか、いかりやの妹で仲本の妻役に悠木千帆(樹木希林)。伊東四朗すわ親治も出演。歌唱出演はキャンディーズ



「正義だ!味方だ!全員集合!!」
同じく 1975 年公開の 16 作目、最終作。横浜を舞台に、偽ジャーナリストと警察官志望の劇画描きが、土地の賃借で揉める商店街と悪徳業者の対立に、ヒーローもの漫画で乱入。ペンと言葉で暴力をくじく。ゲストは榊原るみ金子信雄ミヤコ蝶々財津一郎浦辺粂子鈴木ヒロミツ他。
戦隊モノの元祖「ゴレンジャー」の放送開始と同年の作品らしく、劇中「ゴリレンジャー」なるヒーローが登場。2作目「やればやれるぜ」の舞台だった物流港、6作目「誰かさんと誰かさんが」に出てきたツギハギ自動車が出てきたり、タイトルも「全員集合」に戻り、集大成の感がある。
芝居や全体の雰囲気は路線変更した前2作の延長っぽく、いかりやはペテン師ではあるが非人道的な役ではなく、加藤もおちゃらけ感は薄く良い役者面をしている。中でも加藤の母役として中盤に登場する園佳也子といかりやによる口論のシーン、続く加藤と園の親子の会話のシーンは、コメディであることを忘れる出色の芝居を見せておりとても良かった。
また終盤、ゴリレンジャー対伊東四朗率いる悪党との戦いは、チャップリン作品風の早回し無声コントとなっており(SE までそれっぽい)大掛かりなセットやすわ親治の笑い声もあり、純粋に面白かった。
最後にはテレビの全員集合定番の教室コントもあり、やはり集大成を感じさせた。結局志村はのちの実力を見せないままシリーズを終えてしまったのが少し残念。

正義だ!味方だ!全員集合!! (第16作)

正義だ!味方だ!全員集合!! (第16作)

  • 発売日: 2020/11/01
  • メディア: Prime Video




総評としては、いかりや長介、すごい。
カトちゃん、歌うまい。
仲本、いやなやつ。注、わりといいやつ。ブー、太い。志村、特になし。

半世紀前の作品にも関わらず、映像、音声ともにクリアな品質で観られたことが何より良かった。
何作かはまたいつか観たいとも思う。