BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

体操ザムライ

時は 2003 年。日本体操界の代表として世界で活躍するも、体操選手としてのピークを過ぎたと見られ、ケガもあり家族もあり、引退を決意した主人公 荒垣城太郎。しかし自分の中で納得しきれない思いと、「シノビ」を自称する謎の外国人少年レオとの出会いにより、引退会見の場にて予定を覆して引退撤回。
以後、娘・玲や家族、コーチらに支えられ、現役続行、第一線への復帰を目指してトレーニングを続け、若き日本のライバルたちと対決することとなる。
というのが城太郎目線での大まかなあらすじ。
だが、ドラマとしては城太郎のトレーニングの様子などは地味なものなのでメインにはならず、どちらかといえばそれを支える娘・玲と、挙動不審ながら明るいレオ、および各々濃いキャラクターの周辺人物とのやりとりが多い。

スポーツ系の作品、に限ったことでもなく何でもそうかもしれないけども、題名というのは内容の象徴でなければならないと思う。この作品であれば体操なので、作品全体で体操とはなんたるかを、体操らしさを示してほしい。
という観点から考えた時、城太郎の置かれた立場というのは、鉄棒が掴めず落ちてしまった1話最初のシーンから既に示されていて、以降幾らかの事件やら問題を経る中でどうなっていくんだろうという着地の不安を感じさせるような感覚があり、そういったところでこれはちゃんとしているアニメだと感じたのだった。
まあこじつけでもあるけども、例えば玲にしたってレオにしたってコーチにしたって、或いはライバル選手にしたって、城太郎目線で考えればそれぞれが鉄棒だったり床だったり鞍馬だったりするわけで、最終話の決着に向かってひとつひとつ掴んでいかなければいけないし、踏み外せないものだったと思う。こじつけではあるけども。

そんな感じで(どんな?)辿り着いた最終話。
国内大会。玲は母の芝居を真似て観覧を渋っていたレオの説得に成功、城太郎は完璧な演技を見せた南野を上回るさらに完璧な4回転技を決めて優勝。ばんざーい。エピローグ、レオは再びバレエの舞台に。めでたしめでたし。
全部がうまく終わった、ストレートでわかりやすい結末。

いやいや4回転て、しかも予定になかった抱え込みまでやるとか無理だろ、怪我もあんのに着地も完璧とかありえんだろ、フィクションすぎるだろ、で2年後って尺が足りないにしても展開早すぎだろ。なんていちゃもん付けようと思えば色々ある。
だが、フィクションだからこそ、アニメだからこそだよ。城太郎の引退撤回も、玲の涙も、レオの紆余曲折も、全部がこの成功エンドのため。なんならみんながみんな失敗してきた、しくじって鬱屈していたところから始まったんだから、最後の最後にまた失敗して逆戻りってのは、どうなのカタルシスとか、って話で。
リアリティーにこだわるなら南野に勝てるわけはないだろうけど、その南野にしてもだいぶ現実離れした選手なわけで、もっと言えばおばあちゃんのキャラクターだって運転技術にしたってビッグバードだって、フィクション満載なわけで、そんなにやっといて最後負けるリアリティーってのはやっぱり、たぶん納得できなかったと思う。
なにしろ『サムライ』なのだし。まっすぐスパッと、これはストレートに決める終わり方でこそタイトルにも相応しい。

フィクションとわかっていながら、CG だからブレのない動きで当たり前とわかっていながら、最後の南野の演技も城太郎の演技もすごかった。現実実際にやったらこんなにきれいにはいかないのだとしても、南野の四連離れ技、城太郎の一連の演技ともにもっとじっくり見てみたいとも思った。
あと、80年代映画ネタや 2003 年前後らしい or ゆえの要素もちょこちょこあったが、あと主題歌が当時ヒット曲のカバー、とかあったが、大概本筋にはあまり影響しない要素なので特に何の感想も持たなかった。小ネタは小ネタ、飾りです。どうでもいい。

進撃と呪術に話題も人気も持っていかれて、なんならスタッフも持っていかれたかもしれない中、やはり MAPPA はオリジナルアニメこそが真髄だと思った。
良いアニメだった。