BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

おちこぼれフルーツタルト

全 12 話。
東京郊外、東小金井。ラットプロという弱小タレント事務所所属のアイドルの卵たちが暮らす一軒家の共同寮にて、寮生たちで組まれた新人アイドルユニット「フルーツタルト」が、売れるために、メジャーになるために、アイドル日本一など目指すために、日夜マネージャーからの無理難題に応えたり、ローカルのミニ冠番組のために色々やったり、東小金井民の協力も得たりしながら、がんばる話。

きらら系で、アイドルモノ。このふたつのカテゴリーに当てはまるだけで既に一定需要があると思われる。実際きらら系らしい女の子たちの和気あいあい微笑ましいやりとりや、アイドルモノらしいステージングとそこに至る様々な苦労やら下準備を描いてもいる。
が、しかしこの作品はそんな「きらら系アイドル」というワードから想定される可愛らしい清らかそうなイメージに便所の手水をぶっかけるがごとく、汚れた会話と呆れるほどの下ネタに満ちており、予想を大きく裏切られた。

べつに清純アイドルモノを求めて観ようと思ったわけではない。裏切られたというのは、近年よくある清純青春アイドルモノらしいから1話切りしていいだろうと思っていた穿った目論見に対してのこと。
アイドルモノなんてもう観る必要ない、そんなもんよりしょうもないギャグで呆れさせてくるコメディの方がよっぽどまし、くらいの感覚で観始めたら、そのよっぽどましの方だったことに2話3話で気づき、以降見方を改めることとなった。

まーとにかく毎回欠かさず入れてくるおおきいの平だの言う胸ネタ。後半にかけてどんどん拍車がかかっていった主人公いののトイレ、頻尿ネタ。アイドル本人に言わせるのは問題がありそうな人気とか金とかを巡る泥臭い言葉あれこれ。
アイドルは夢を売るのが商売。その夢をズタボロにしかねない事柄が多かったけれども、一方でアイドルの本音、本性、実態はこうだわな、いやむしろきらら系としてアイドルの現実をだいぶやんわりと表現しているんだろうな、と思った。そういう意味ではとても練り上げられた作風だし、アイドルモノにしてコメディとしてはかなりレベルが高いとも思った。
下ネタには呆れつつも、そういう汚れた笑いの入れ方、入れる流れ、またお約束として使う巧さなどがとても自分好みでよく笑えた。

またアイドルモノとしての本文もちゃんとしていて、劇中で披露されるオリジナル曲はそつなくポップで耳に残り、歌唱&ダンス実演のシーンは手描きでメンバー個々の差異も表現されているなど見応えがあった。
この根幹のアイドル部分の手堅さと、品のないコメディ部分の強烈さが絡み合って生まれるよくわからないパワーみたいなもんが、この作品の魅力だと思った。


最終回雑感。
いの、最終回もやはりトイレネタ、しかも携帯トイレで野ション。最後だから何してもいい、くらいのやり逃げ感ひどい。立つ鳥跡をどんだけ濁す。
みんなでブロ子。この曲が最も耳に残る。
ロコの髪型の秘密からの満を持してディズニー抵触ネタ。
ロコのスモック幼児コス、キャットプロ一味のスク水、全員でメイドコスと、これまたやりたい放題のやり逃げ感。
他愛もない会話中、突然ロコの力強い振り返り。作画放棄のこけし絵が多いのに、なぜそんなところに作画カロリーを割いたのか。
終盤ライブ「青春の終焉と少女の翼」。歌唱をバックに実演風景は描かず、日笠陽子堀江由衣にまとめの台詞を語らせるという、なにか大物声優忖度感のある終わり方。

面白かった。2期があるなら観たい。
「珠詠」といい、意外ときらら系も侮れないのがあるようだ。