BINTA

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それだけがネック

全 12 話。
都会のどこにでもありそうなコンビニで働くバイトたちと店長、いずれも「同じ職場の人間」という以上の繋がりを持たない関係希薄な人々。性格はそれぞれで各々個人的な悩みや疑問や不満を抱えつつ、希薄な関係性ゆえに互いに相談したりすることもない。
そんな中の一人、誰とも一切言葉を交わすことなく黙々と実直に働く男がいた。「武藤」と呼ばれ、おにぎりの頭で日夜おにぎりを作り続ける彼には、誰にも言えない、なぜか誰もが気づいていない秘密があった。・・・といった話。

全話観終えてから調べて知ったけど、原作モノかと思ったらオリジナルアニメだったらしい。スタッフやキャスト声優も元々アニメ畑、声優畑のひとはあまり参加していないようで、冷静に考えると画風や動画の動きも紙芝居調だったわけで、つまり非常に異質なアニメだった。

それだけがネック。このタイトルにもひとクセあって、前半話数ではコンビニ従業員たちそれぞれが抱える個人的事情、それぞれの人生や生活における引っ掛かり=「ネック」を語ることが中心。
主人公が「武藤」青年が話の中心になっての後半は、彼の秘密、過去、ここに至る経緯を語っていくことによって「ネック」の意味が変わる。ブラックユーモアであり、冗談にもほどがあるというか、なるほどアニメでしかできないものかもしれないとも思った。

本業声優でないキャスト陣のまるで力の入っていない一般人ボイスの芝居と、どこまで計算されたものか絵も音も演出もゆるい世界、でいてうっすら窺える妙に辛辣なメッセージ性だけが芯を感じさせるという不思議な作風に、ショートアニメながら簡単に切り捨てられない魅力があった。なんなら5話辺りからちょっと毎週楽しみにも感じていたかも。

これが 15 分とか、ましてや 30 分の通常アニメだったら、メッセージ性がくどかったり演出がだるかったり話がかったるかったりでこのおもしろさは半減以下だったと思う。
このゆるさに対して ED テーマが無駄に激しいのもよかった。

同じような作品がまた出てきても同じように楽しめるかは疑問だけど、これくらい練られたショートアニメならまた観たい。