全 26 話。
誕生経緯、生体の詳細など誰も知らない、人間でも動物でもないもの。人間になれず生まれ、人間になりたいと願い、人間に擬態しながら、生まれ持った正義の心だけを生きる支えに、人知れず悪の化物と戦い続ける三匹の妖怪人間の旅物語。
全話1話完結。西欧らしき国を舞台に毎回異なる町を訪れ、主に三匹のうち幼体のベロが無邪気に町を散策していると怪しい気配や事件に遭遇し、毎度仲良くなる町の子供と共に事件に巻き込まれ、事件の真相に悪霊やモノホンの妖怪の類が絡んでいることが分かると、ベロの行動を見守っていたベムとベラが救援に入り、敵対するそれら悪の者と戦ってぶち倒し、事件解決となるや騒ぎが広がる前にその町を去る、というのがだいたいの流れ。
後年幾度か別物としてリメイクされることもある作品の最初のシリーズ。原点にして唯一無二と言える頂点。
初見ではないし、幼い頃から何度も観ている。本放送の制作年度を考えるとその当時からして既に再放送だったようだ。十代の時に数度観たし、二十代になっても三十代でも一度二度なんらか媒体を変えつつ観た記憶がある。今回観たのは最後に観て以来十年ぶりとかだろうか。
しかし何度何周観てもすぐに内容を忘れる。常に覚えているのは OP の口上と OP テーマ、妖怪人間三匹の基本的な性質、そして最終回のみ。なぜ忘れてしまうのかと言えば、要はほぼ全話似たような話だからだろう。主役三人以外にレギュラーキャラはおらず、味方キャラも敵キャラも毎回違って、中には多少特徴的なやつもいるけども、いずれも各話限定で、見た目と名前が違う以外には行動パターンや思考パターンはどいつもこいつも似たようなもので正直代わり映えがない。
アニメ黎明期の作品に各話の多彩さなど求めてはいけないのでケチをつけるわけではない。言ってしまえばそのパターンこそがこの作品そのものでもある。
ベロは好奇心旺盛で怖いもの知らずのフラグ立て上手。仲良くなる子は勝ち気だけど苦境に為す術を持たず、敵キャラはドリフ並みにフラグ回収上手。ベラを中心に大人は大半が高笑いを好み、その割にあっけなくやられるし、ベムは無表情ですべてを語る演技派だが何か言うべきところでも口は一文字に、時には相手がベラでも華麗にスルー。それに対してベラも誰もツッコミなし。
アニメ黎明期の作品だけに当然、特殊 ED や話数が進むごとに OP / ED 内での絵に変化があったりなどというのは手法からしてまだ無く、なんなら敵の倒し方や事件の解決のしかたもかなりあっさりしており、敵をやっつけた →「手強い相手だった。よし行こう。」で三人が夕陽に向かう背中エンド、みたいなこれまたツッコミを入れたくなるほど味気ない幕の引き方をする回も多い。
でもそんなこんなもこの時代、この作品の味なのだ。このあっさり淡白なサスペンス、主に韓国スタッフが制作したという独特の画風やまだまだ無骨だったり荒削りだったりな作画の動き、それらに比較して異常に先鋭的でホラー系アニメとして研ぎ澄まされた音楽、そして今となっては不思議な台詞回しも幾らかありながら 100 %大真面目に交わされる芝居、渋い演技、等々のマッチ or ミスマッチ。をひっくるめてのつまりは昭和感。そういったところがいつ観ても、いつまで経っても独特の魅力を放つ。たぶんそんなわけで何年か置きに観たくなる。
今回気づいたのは、意外に三人が同時に揃って妖怪の姿になっている回というのはほとんどないということ。もしかして最終回だけだったんじゃないかとすら思ったほど。三人連れ立って敵と対峙している時であっても、毎回誰かしら一人は人間姿のままで戦っている(または打ち負けて弱っている)。なんでここでこの状況でベロやベラは変身しないんだ、と思うことは幼い頃から何度もあった気がする。大人になって見直すとその理由がわかる話数もあったけども、尚理解に苦しむ場面もまだあった。
異世界転生モノとかゲーム風ファンタジーモノを知った上では、あーなるほど MP が足りない or MP の消費効率を計算した上でこの状態なんだなー、と解釈できることが多かった。ベロがなかなか変身しないのは MP の上限値が低いからなんだな。おまえ見つかるやろ姿隠せよ透明になれよ、と昔から幾度となく思っていたが、「透明化」スキルを使ってしまうとのちにバトルが発生した際に「変身」に使う MP が無くなってしまうんだなと。
あと、ベラだけが使う蘇生術の詳細が気になった。ただのザオラル系なのか何なのか。死体が白骨化したり魂が抜けたアンデッドも術によって元の人間に戻せるというのは、近年のファンタジーモノでもなかなか見かけないご都合魔法だと思った。
歳を重ねるごとにツッコミたくなるポイントが増えているようにも感じる。そんな見方もできるからこそ何度も楽しめるのかもしれない。時代性のズレ、価値観の変わりよう、古臭さがおもしろいというか。
今回観たのはdアニメストアの配信版。昨秋に見放題作品として追加されたので。
ウィキペディアやアマゾンの DVD 商品レビューに詳細はあるが、この作品のソフト版は幾つかバージョンがある。
このdアニ配信版は、一昨年に発売されたムック本「妖怪人間ベム COMPLETE DVD BOOK」付属の DVD 収録のものとほぼ同じ、所謂修正版らしい。サブタイトル表示は写植ロゴだし、第4話タイトルは「人魂」だし、音声カットのシーンはわからなかったけど一部話の繋がりの違和感からシーン丸ごとカットされているっぽいところがあったようだし。
2010 年に全話無修正原版をリマスタリングした「初回放送版」という DVD が発売され、当時買おうかとも思ったが、観たいは観たいがさて円盤買って何度も観るものだろうかという疑問に答えが出せず、まあ買い逃して廃盤になってもビクターのことだから二三年も経てば廉価再発するだろうと楽観視して見送った。それが十年経っても再発無し。
ようやっと新たに出た前述の DVD ムックは修正版。そしてそこからまた一年置いての有料動画配信。ここまで引っ張ってdアニが取り付けてきたということは・・・と期待したものの、残念な結果だった。
いや、こうして修正版ばかりが普及しているということは、無修正初回放送版の価値は依然下がっておらず一定需要はまだまだある。なんなら時を経るごとに増えていくはず。もう物理メディアなんてユーザー側では終わっていて配信の時代。それでも円盤で出してくるなら致し方ないから買うかもしれないが、是非とも次は初回放送版の配信を期待したい。