BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

メガロボクス

この春開始のやつではなく、2018 年放送の1期。全 13 話。
近未来っぽい世界、「ギア」と呼ばれる身体能力を向上・調整する機械を肩から腕にかけて装着し、1対1で殴り合う進化型ボクシング「メガロボクス」。その世界大会「メガロニア」に、スラム風の地下社会から否認可の身を偽って参戦した無名のギア無しボクサーが、八百長トレーナーと共に生身の実力だけで勝ち上がっていく話。

原案「あしたのジョー」。という点から本放送当時に興味が沸かず選別対象に入れなかった気がする。その時の自分を全力アッパー食らわして沈めたい、と思うほどにこれ、傑作だった。
原案作品が傑作なのだから当然な面もあるが、原案に唾吐く勢いでメガボロクソにずっこける翻案作品も多いので、この作品はそんな中でも稀有な珠玉の部類に入るものだと言えるかも。

原案は原案であってこの作品は原作とは別のもの。なのだろうが、原作の方に今まで全く興味を持ったことがなかったので、比べるにも知識がなさすぎて何がどう違うかほとんどわからなかった。
主人公が「ジョー」と呼ばれるやつ、そいつを叩き上げるトレーナーがアイパッチに髭ハゲデブのおっさん、ライバルが長身でアゴでニヒル。知らないながらに認識できた共通点はそれくらい。あと中盤に強調演出があった「ジョー!立てー!立ってくれー!!」という台詞も原作由来だろう、聴いたことがあった。

原作とは別もの。を前提としつつ、世界観も多少違って現代のアニメ的に仕立ててはあるけども、恐らく話の大筋は似たようなものなんだろう。
作画の手描きの線が、解像度が粗いというか、今風のアニメの画質でなく、機械処理された画調っぽくなく、漫画っぽい線で、そのへんも原作リスペクトなのかなと思った。原作漫画への、というよりはアニメ版の出崎統リスペクトかな。

声優の芝居も原作アニメに寄せた感じなのではないかと思った。現代アニメで無駄によくあるはしゃぐような空気が全然なく、誰もが低めの声で、重い。子供キャラが配されているのはその辺空気のバランスを考えてのことかな。
あまり見ない名前のキャストが多かったけど、声優の知名度など気にならない、誰もが適役に感じられる声ばかりだった。

話の内容も骨太で、無駄が一切ない。ボクシングとはなにか、を現代アニメ的エンタテインメントの表現で描くことについて強力に追求していると思った。
カウボーイビバップ風な近未来観とか、主人公がアフロとか、サウンドトラックがジャジーヒップホップだとか、挿入歌にラップが入ってきたりとか、渡辺信一郎作品に似た本気ふざけな作風もあったりして、しかしその盛り込み具合のバランスも良く、とても好みにはまった。ED 曲も好き。

ビバップ風といえば、主人公ジョー役の細谷佳正の声もそれっぽかった。時代が時代なら山寺宏一がやっていてもおかしくない。いや逆にこの作品のキャスト&スタッフでビバップリメイクか続編かそんなふうな作品をやってほしいとも思う。あ、それサムライチャンプルーか。

など、考えれば考えるほどとんでもないものを見逃していたと思う。こういう地味でも強大な傑作を求めてアニメ趣味を続けているんだろう。
2期視聴決定。「あしたのジョー」もこの機に観ておこう。と思ったら2シリーズで 79 話+ 47 話もあんのか。そりゃ気軽には観れん。というかその長さだからこそ今まで観ていなかったのだった。