BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

ピーピースカスカ

世間の連休の反動で忙しいのかなんなのか。
とちくるいたる気分なのか。

うちにいて、(中略*1)、先日不意に口をついて出た音。
「ピーピースカスカ」
あれ? これなんだっけ。なんか大昔に聞いたことのあるやけに馴染み深い、だけど何十年も思い出すことのなかった、忘れ切っていたフレーズ。
すぐにググった。

「SOSペンペンコンピュータ」という歌に出てくる歌詞だった。

ユーチューブで検索一発、この動画を再生。
それだけで、開始1秒、自分の頭の中の何かが開いた。
最初に発せられる曲中アナウンス「アボガドさんごう、アボガドさんごう」
懐かしいなんて生ぬるいもんじゃない、封印していたやばいものを開いて触れてしまったような感覚。うわあー。続いて曲が始まる。レトロな電子音と乱暴なドラムマシーンの打ち込みの感触、と今現在の耳と脳では冷静に認識・分析するが、聴き取っている頭の中は未就学児童の頃にグニャーっと戻っていき、流れるガタガタのアニメーションから目が離せない。

曲も歌も絵も、詞の全体もほぼ覚えていなかった。断片的にという言い方はまさにだが、その断片すら欠片ほどであって、よくここにたどり着けるような言葉を思い出せたもんだと思ったり。いやそう思ったのは今だが。

ひらけポンキッキ。そういう意味だったのか。(ちがう)
開いたわ。四十年がかりで。
しかしポンキッキの曲は数多ある中で、金字塔の代表曲であるたいやきやらは別として、こんなのが出てくるとは。この曲を思い出したことよりも、この曲を見ていた時の自分の姿が、この映像を見ていたその時の眼の感覚が、うっすらぼんやりではあるけど蘇ってきたことが、不思議というか怖いというか。

何を思って見ていたのか、見て何を思ったのかは全く思い出せない。
歌詞など理解できたはずもない。「おちど」なんて言葉知らなかったはず。コンピューター関係の用語なんて、それ以前にコンピューターの存在すら遠いお星さまのようなものでわかるはずもない。
その程度の知能の頭に四十年後まで残るほど深く刻まれるに足り得たのは「ピーピースカスカ」ぐらいのものだったんだろう。

よく朝、なんか口あけてポカーンと見ていたような気がする。
絵的に記憶がやや濃い目なのは途中の音頭調の場面と最後の宇宙船がケツ振って去っていくところ。怖いと思ったのか、気持ち悪いと思ったのか、なんとなくその時の気分を思い出せそうな気もするけど、それはこれを見たからそうだったのか、それとも家庭や保育園やでの嫌なことがあってそうだったのか、どうだったんだろうなー。まだその頃はまともにやんちゃなだけのくそがきだったか。
開けないように完全密封したものまで開いてしまいそうで、これ以上は進んじゃあいけないと記憶の中の児童が言っている気がする。


それにしてもこの度聴いて、かっこいい曲だと思った。
歌の最も盛り上がる一番良いところで音を少し外しているのが絶妙に良い。それに歌詞の内容はスペースラナウェイ風でもあり、なのに使っている言葉はゆるくて、その辺のセンスもすごい。全然覚えていなかったがたぶん自分のその後何か色々に影響を与えられている気がする。

四股を踏んでいるのとか意味不明だが、「相撲取り」→「星を取りに行く」→「宇宙船」ってことなんだろうか。



あと、流れで「ホネホネロック」や「まるさんかくしかく」も観た。

これ、当時は映像のこととか興味もクソも全く知らないし、今にしても「ポンキッキの映像はそういうもの」という前提を覚えていれば驚くことでもないけど、そういうの無しにアニメーション映像として観ていたら、面食らった。
これセルアニメーションじゃなくて絵を描いた紙を切って動かしている、紙芝居だ。プラス当時の映像技術で可能な力技のエフェクトも施してはあるけど、動きに関しては揺れ方とか完全にスタッフの手わざ。
あれだ、数年前に AC部 の「高速紙芝居」で斬新な手法として話題をさらった、パソコンソフトでパーツごとキーフレーム処理で動かす要領のやつを紙に全部描いて手で動かす、とかいうあれ。あれの、もっと上を行くやつをもう大昔にやってた。



あの放送当時、1980 年代、貧相な世相の今と違ってバブルに向かう高度経済成長期、テレビも金はあったはずなのに、手描きアニメでなく(いや手描きだけど)紙芝居風でやろうとしたのは、やはり幼児向け番組という点を考慮してのことか。
そういえばもしやと思って観てみたらたいやきもパタパタママも全部この手法だった。なぜ気づかなかったんだろう。なぜ忘れていたんだろう。そりゃおめえ、驚いても明日には忘れるようなもんだからよ。


考えてみればちょっと前にヒットしたコマ撮りアニメやポプテピがやっていた色々もポンキッキがほぼ全部やっていたわけで、改めてこのへんの影響というか、いや影響力そのものよりもやっていたことの企画、センス、創作力、実行力、また全国放送に乗せる決定力、すべてそれ自体がすごかったんだな。
今の時代、こういう映像は個人製作でもっとクオリティだの熱量の高いものを出している誰かがいてどこかで観られるんだろうけど、この時代やそれよりも昔のものは今のそんなのとは別物だ。
もちろんそれはおっさんやじいさんが懐かしさ半分で観て感じる凄さであって、今の若いのが観てもただ古臭いつまらないものにしか見えんのだろうなー。
まさにピーピースカスカなおまえひとりで行けばいい、って。
いうオチで締めとこ。


*1:ふと立ち上がった際とか便所いく時とか、意味不明な言葉を発することがある。幼稚性か或いは痴呆性か、両方か。それはなんでもいいがとにかく、世の中に存在する既成の言葉、誰かの歌のフレーズ、昔聞いたギャグ、といった類ならまともな方だが、なんでもないオリジナルな短文やら、全くどこの国の言葉でもないようなデタラメなことを言ったり、謎の新曲デモっぽいと言われればそう捉えられなくもないような、つまりきちがい染みたやつも多い。あまりにデタラメすぎていちいち覚えていない。掃いて捨てる、吐き捨てる、まさに便所に排泄するのと同じ。つまり排泄のテーマを口ずさんでいるのかもしれない。歌の場合はそうだが、歌でもないリズムも語呂もめちゃくちゃなやつはもうどうにも意味づけのしようがない。よく言えばオノマトペ、よく言わないなら奇声という以外には適切な定義語がないだろう。