BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

東京少年 TOKYOSHONEN

また昔話ですかおじいちゃん。



ユーチューブを漁っていたらビクターエンタテインメント(メジャーレコード会社)の公式チャンネルが古い作品をたくさん上げていることに気づき、そのアップロード動画欄を下へ下へ遡っていったら、予想外の動画に出くわして驚いた。

東京少年

アップロード日は去年3月。
なんでまた三十年以上経った今になってと思ったら、その時期に全音源が配信リリースされていたらしい。
東京少年 | ディスコグラフィー | ビクターエンタテインメント

全音源とは書いたが、調べたところ「ゆびきりげんまん」初回盤付属の 8cm CD の楽曲は無いようだ。そこに収録された "Shy Shy Japanese" のリミックスが、当時クラフトワークがリリースしていた「THE MIX」の "Dentaku" 風のアレンジになっていておもしろいのに。



それはそれとして、いい機会なので動画一曲ずつ思ったことを書く。


東京少年』は女性ボーカル笹野みちるを中心とした四人組のロックバンド。
以下略。(東京少年 - Wikipedia

映像の多くは岩井俊二が監督。バンドのディレクターは野崎圭一。



"ハイスクールデイズ"
上に動画貼り付け済みのやつ。以前非公式の動画では観たことがあった。
ベスト盤「もーいいかい?」の最後の曲として自分的にお馴染みの 1st シングル曲。このバンドの音源を初めてちゃんと聴いたのがそのベスト盤で、最初は同級生に借りてカセットにダビングしたものだったが、あまりにも何度も聴くので後年 CD を買った。中古で。CD が欲しくて、ではなく、たまたま中古屋で見つけたんで買っとこう、って。以後三十年以上聴き続けている愛聴盤のひとつ。

この曲にはなにかと甘酸っぱい記憶が甦るような感覚があるが、その頃はまだハイスクールじゃなかったな。ギターなのかシンセなのかギターシンセなのか判然としないが、音符の切れ目なくポルタメントを伴ってリードや裏メロを鳴らしている音がすごく好き。フェードアウトで終わっていくところに物悲しさを感じる。



"針とパズル"

この映像は今回初めて観た。2nd シングル曲。かなり好き。
2番Aメロのコーラスワークが良い。間奏もかっこいい。
ドラムの高音域が尖りすぎているのか、昔のカセットテープではシンバルが音割れしていて、それをずっと聴き続けた後に CD を買ったので、今でも CD(の音質の AIFF 音源)で聴いてもシンバルの音が割れているような気がする。特に間奏終わりのとこ。

そういえば、何年か前に三十年後のご本人さんが歌唱している動画もあったな。



"君の歌に僕をのせて"

3rd シングル曲。たしかテレビドラマのタイアップだったはず。
ベスト盤「もーいいかい?」には "inner version" というほぼ別曲のようなアレンジの方が収録されており、オリジナルバージョンは長年シングルのみだったレア曲。配信リリースによって聴くのは容易くなったが、数年前に中古でその 8cm シングルを入手済みで今更。
どれくらい違うかというと、まずテンポ、リズムが違い、歌に至ってはサビ以外がメロディーも譜割りも全然違う。こちらはシングル曲らしく底抜けに明るくて映像もバカバカしい演出が見られるが、inner version はその名の通り暗くて内省的な雰囲気。

かつては昔テレビでちょっと聴いただけの印象が美化されて、なぜベスト盤に入れなかったのかと軽く憤るくらい憧れた曲だったが、CD でまともに聴いてみれば、意外に二度三度聴けば十分と感じてしまって、inner version で正解みたいな感覚になったっけ。CD 入手前にこの動画の非公式に上げられたやつを何度か観ていたので、それで聴いて満足できていたのかもしれない。あと、初めて聴いたのは十代前半で、CD 入手したのはそれから二十数年後だったから諸々感覚等々変わるのも当たり前。



"プレゼント"

4th シングル曲。アニメ主題歌として知られた曲らしいが、観たことはあってもまともな記憶がなく、当時聴いた覚えがない。やはりベスト盤「もーいいかい?」で初めて聴いた。
その某らんまの音楽というと、お昼のサイコロ投げるトーク番組で急に思い出すことがあったなーあれはたぶんらんまの何かだったよなー、ぐらいの思い出。調べたら、ああ、間違いない

話を戻す。このミュージックビデオ。
ここでの笹野みちるの髪型はなんだろう。ショートボブ? に前髪は眉上で、可愛らしいと言えないことはないが、決まっているとは言い難い。この当時、昭和の女子にはおかしくない髪型だったかもしれないけども、例えば同列に語られることの多い永井真理子を手本にしたかのような白いTシャツとブルージーンズも含め、なにかどこか会社主導のお仕着せの女性歌手イメージに反発したかのような空気が感じられるのは、後々のことを知った上で見るからだろうか。
よく言えば後の川本真琴あたりに通じるアーティスト性。さもなくば、これ、あれじゃん、ちびまる子。



"トビキリの朝"

4th シングルのカップリング曲。だが CM タイアップが付いており、当時ラジオでよく耳にした記憶がある。カップリング曲ながらベスト盤「もーいいかい?」に収録されているので自分的にはやはりそちらでお馴染み。曲名の通り朝の似合う爽やかな曲。「君の歌に僕をのせて」(シングルバージョン)と曲調も似て、同路線とも言えそう。

ミュージックビデオは今回初めて観た。メンバー四人とも揃いの衣装は珍しいというか、この一作だけではなかろうか。そもそもアイドルやお茶の間向けでないバンドが揃いの衣装で演奏するというのも珍しいか。
ところで楽器隊三人が手にしている楽器もどきの作りの雑さが気になる。当て振りの適当さも気になる。この時代のミュージックビデオにありがちな無駄に思える合成編集やエフェクト処理の過剰さも気になる。気に障ると言うべきか。
岩井俊二もこんな俗な画づくりに凝った時代があったのかーと思っていたら、エンドロール「Director / TSUYOSHI TAKASHIRO」。ああーなるほどー、これがハイパーメディアね初めて見た。



"Shy Shy Japanese"

5th シングル曲。
CM タイアップで、たぶんそれがこのバンドをちゃんと認識した初めて。この曲に限らずだが東京少年の曲は歌詞の語感にフックがあって、サビメロがキャッチーだと一発でガッと耳を引っ張られるような感覚がある。なぜ惹かれたのかを今更分析すると、そんなところだろう。
間奏はキーボードソロ。ギタリストがいるのにわかりやすいギターソロのある曲は少ないのがこのバンド。バンドなのにドラムレスという変則編成。バンドブームの最中に出てきたからか、同時期の他のバンドとは異質な点が結構ある。

そういえば数年前、DTM が趣味だった頃、この曲を丸々コピーしようとした。音源をじっくり耳コピしながらドラムとベースをまず1コーラス分打ち込んだ後、ギターも打ち込みで作っていったが、Aメロにやたら再現しづらいノイズ同然のようなフレーズが出てきて挫折した。単にノイジーならディストーションでも荒めにかけて音階は無視して進めればよかろうが、一応音を付けて鳴らしてあって、でもギタリストやギター弾きの経験がないと聴き取れなさそうなフレーズで、絶対音感も持ち合わせていないので、そこでやめた。
目的は愛用していた某女声ボーカロイド東京少年を歌わせたい、だったが、そこまで至らなかった。自分の音楽能力には限界がある、それもわりとレベルが低いところらしい、とその時に思い知った。

ところでこのミュージックビデオ、さすがバブル時代と言うべきか、かなり金が掛かっているように見える。どんだけロケやって、ビクターの社員とか関係者のツテなのだろうがエキストラ何人使ってんだ、挙げ句にこのオリジナルロゴの赤いジュース缶、終盤には同ロゴのビル看板まで(CG 合成の方が金掛かる時代)。たかがアルペンタイアップ曲一曲のためにここまでできる、そんな時代があったんだね。

どうでもいいけど、オリジナルロゴのジュース缶というのが、これの直前に観ていた別のやつにも出てきていた。同じくビクターエンタテインメント

どちらも飲料水のタイアップなんて付いていない。
東京少年飲料のロゴの意匠はどこぞのパクリ丸出しだが、要は適当にステッカー作って適当な缶に貼り付けて使って撮影してしまって訴えられなければ問題なし、っていう、それも時代だったのよね。こういうのは洒落と分かって訴える方が無粋って見逃してくれるのが普通だった時代でもある。
いやまあわからん、水面下では小さな揉め事があったかもわからん。しらん。


"Harmony"

6th シングル曲。
この映像はオンタイムで観ていた。ビデオに録ってあって結構何回か、何十回か観たかも。このシングルのリリース後にその年で解散すると発表があり、卒業ビデオ風のこの映像を観ながら何か思った気がする。好きになったバンドが直後に解散する、そのジンクスの第1弾だった。ジンクスと言えるほど例は多くないが。
しかし映像に関しては今更何と思うこともない。この当時から既に、映像美だとか青春的ドラマ性に感じ入るような感性を持ち合わせておらず、そのままそこんとこは砂地のまま大人になったのだ。富田靖子似の幼女はかわいい。言語化可能な感想はそれくらい。

映像よりも曲。曲が好きだが、これまた、好きというほかに書くことはない。



シングルはもう一枚、解散前に "サイレントメビウス~Sailing "というタイアップアニメのタイトルを冠した曲をリリースしているがその動画は上がっていないらしい。当時も観た覚えがない。
その後ソロデビューした『ささのみちる』のミュージックビデオは何作か上がっている。ビクター在籍時の音源も東京少年と同時に配信リリースされたらしい。


東京少年は 1991 年秋のライブをもって解散。
ベスト盤「ゆびきりげんまん」は活動後期の楽曲を中心に選曲され(ラストアルバム「帰り道」との重複が4曲)、最後のライブからの音源も収録して解散後にリリースされた。

一般的に誰もが知るほどのバンドではなく、後年知らしめようにも偏見じみた話題が一部に定着してしまったせいなのか、CD の再発売やリマスター盤リリースは過去に一度もなく、楽曲単体がオムニバス企画に収録されることも稀だった。どこかタブー視されているような空気さえ感じられた。忘却の彼方にあっただけなのだろうけど。
配信リリースにより解禁されたのは、なんというかそういったその、このご時世、ゆえなのかな。などと変に勘繰るこの感覚もまた差別的な視座にあるのかもしれない。やだね。誰も見ていないこんな文章の中でそんなことを気にする性格もまたやだね。

それはそれとして、東京少年活動時に映像商品は3本リリースされており、それらはやはり検索すれば出てきたりするんだけども、CD の再発が叶わないとなれば映像なんてさらに需要は少ないだろうから DVD 化とか無理だろうから、同じようにユーチューブでとは言わないまでも、動画販売サイトで公式ソースの映像を売ってくれんやろか。
なんつって非公式の動画にしても一度観りゃ十分だったりするから困った時代よ。




これで終わりではなく他にも何組か色々書くつもりだったが、もう十分。
音楽の思い出はその周辺の要らない記憶まで出てきて疲れるからもう当分いいや。吐きそう。ちがう、吐いたのがこれだ。