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ZARDARTISTCHRONICLE

これおもしろかった。

ZARD Official Website – WEZARD.net | ZARDデビュー35周年記念“聴くドキュメンタリー” 「ZARD:ArtistCHRONICLE」がSpotifyにて公開決定!

どうせ既出の、良い部分を避けて語る隠匿体質ビーイングらしい話ばかりだろうと思ったら、ちゃんとしてた。というか、あまりに音楽プロデュース&レコーディング制作のマニアックな話が多く、雑に "負けないで" や有名シングル曲数曲を好きな程度でザードファンを名乗るようなタイプのライトファンなどは、これを聞いて喜ぶのか。それは知らんが自分は楽しめた。


以下、各エピソードを独断で抜粋&要約


第1回配信(長戸大幸寺尾広、大藪拓)
・「ZARD」は元々英語にはない。Wizard 、Blizard などに含まれるがいずれも良いイメージがない。海外で売れた男性ロックバンドにはクリームやバニラ、パイなど甘い名前を含むのが居た。ZARD はその逆(いかつい名前で可愛らしい女性のポップス)をやりたかった。
・デビュー曲はドラマタイアップで少し売れたが続く二作はチャート下降。どうにかしようとテレビ露出させたら、一応目論見通り上向いた(恐らく "眠れない夜を抱いて" ~ AL「HOLD ME」までの話)。
・もう少し話題性を盛るために TUBE 春畑道哉に初の楽曲提供をさせた( "IN MY ARMS TONIGHT" )。
・たまたま受験シーズンに出すシングルとして応援ソングを作ったら、想定外に大ヒットしてしまったのが "負けないで" 。実質歌詞は勝手に夢を追う彼氏を想う女のラブソングだが。
・80年代の後半、洋楽 Baby Face の作品で聴けた強いスネア。それをハードロックに使ってポップスにしたのが90年代初期のビーイングサウンド
・"マイフレンド" はAメロとサビでテンポ(BPM)が違う。サビの方が遅いがスネア四つ打ちのリズムなので気づきにくい。Aメロの方が速いので、サビに行くまでBメロで1小節ずつ徐々に遅くするという工夫をしている。→ その証拠に、曲に合わせてメトロノームを鳴らすと途中で合わなくなる。

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第2回配信 抜粋
「負けないで」(歌詞)は坂井泉水のセンス。
・"揺れる想い" は難航した。タイトル部分がなかなか出てこなかった。
・タイアップに必須の言葉が指定されている場合、それを曲の至るところにはめてみて一番合う部分を探した。「曲(仮歌)がそう歌っている」という部分を探す。
栗林誠一郎のデモ仮歌は英語。織田哲郎ハナモゲラ語(でたらめ仮英語)。徳永暁人はデモに使える仮英語を貯めている。
坂井泉水の実像は体育会系。あと、川島だりあも足が速い。
長戸大幸にとっては「戦友」。よく言うことを聞き、最後まで離反もなかった。
・東京時代は毎日17時出社で皆勤賞並み。27時頃まで歌詞を書いて歌って、ずっと続けた。
・売れなくなったら辞めようという話だった。「TODAY IS ANOTHER DAY」が思うほど売れず潮時かと思ったが次に出したベスト盤が売れ、もう少し続けようと思った。2000 年前後 R&B ブームを挟んだのち8ビートが復権してきたので続けられた。

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第3回~葉山たけし編 抜粋
・アレンジャーが三人居て、同じ方向性を向いて行こうという話をした。(恐らく明石昌夫、葉山、池田大介と思われる)
・長戸主導で「ロックとの融合」を図っていた。
・「ポップなデモを如何にロックっぽく上げるか」、ドラムを大きく聴かせることは意識した。
(以上、ZARD に限った話ではなく、当時のビーイング系全般について)
・"負けないで" はとにかく強く。ギターもドラムも。そこに自分の好きなアーティストのオマージュを加えた。
・どんな曲でも坂井泉水のボーカルが乗って、いつものエンジニアが仕上げると ZARD になる。
・どういう風な詞が乗るかは、可能であればアーティストに確認する。
・仮歌を入れるためのオケ(仮オケ)がまずあり、そこに仮歌が入った時に詞ができていれば、その詞に合わせたアレンジを加えることもあった。そして差し戻し指示を受けたりしながら、完成形まで詰めていく。
・アルバム「TODAY IS ANOTHER DAY」の制作には膨大な時間が掛かり、「幾ら掛かったぞ」と怒られかけた。が、いつも時間(期限)も費用も厭わず好きなだけやらせてもらえた。
・"マイ フレンド" は ZARD のブームが一段落した時期に、もう一度強い曲をということで作った。ギターソロはラスサビに至るバランスを考えつつ攻めたものになった。

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第3回~池森秀一編 抜粋
DEENZARD は使用スタジオが違い、実物の坂井泉水に会ったのは一度きり。
DEEN デビュー前、池森は長戸大幸の運転手をやっていた(ZARD デビュー済みの時期1ヶ月程度)。
・長戸は「歌う奴が書け」(作詞はボーカルが担当)という考えで、池森も作詞のために坂井のほか松任谷由実や B'z 稲葉の歌詞を読んで勉強した。
・タイアップがある曲で、自分の書いた歌詞が採用に至らず、坂井泉水に書かせよう、となった。
織田哲郎 "いつまでも変わらぬ愛を"、ZARD "揺れる想い" とミリオンヒットが続いたポカリスエット CM のタイアップが DEEN に来たのか、俺ら売れてる?すげえな、と思った。("瞳そらさないで")
・"翼を広げて" はJリーグ応援歌のようでいて恋愛ソング。"瞳そらさないで" は爽やか清涼系のようでいて心離れかけた男女の歌。"Teenage dream" はノスタルジーに乗せた学生の苦い三角関係の歌。タイアップのオンエア尺では分からない文脈を入れる作詞能力がすごい。

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など。

ほか、第3回はビーゾーンの若手二組のエピソードも別にあるが、どちらもボーカリストで歌詞の感想やら後追いで ZARD を聴いた若いファン目線の話ばかりで、面白いところがなかったので省略。



自分は90年代当時や各作品オンタイムでは歌詞など全く聴かない人間であり、ビーイングの楽曲については大概ドラムの2拍目クラッシュシンバルばかりを耳で追っていたという特殊性癖人間だったので、今尚それなので、坂井泉水の歌詞をそれなりに咀嚼するようになったのはここ十年くらい。

例えば「愛が見えない」のBメロなど、いまいちメロディーに対するハマりが悪い歌詞をリズムもたつきながら無理矢理歌っているような部分は、ある意味フックではあったのだろうが、ZARD を聴いていてあまり好きではない部分だった。
その傾向は後期に至るまでずっとあって、それでも「音に対する言葉のはめ方」を評価されているってことは、玄人目線ではそれが正しく良いってことなんだろう。同系後輩に当たる三枝夕夏 IN db などの楽曲でも同じような傾向が見られ、自分はかつてそれを「作家が書いた良い曲の上でリズムに合わせて作文を読んでます的な歌詞」とか言って小馬鹿にしていたのだけど、そのタイプを好む人の方が多いってことなんだろう。か、どうか。

以上、故人を美化、神格化するようにあまりに歌詞歌詞言うエピソードが多かったので、本当か?もし今も存命で活動を続けてきて変なスキャンダルに揉まれて汚れた大物歌手みたいになっていたとしても、同じ評価で語れたか? なんて思いが込み上げて書いた。略してお気持ち。
とはいえ確かに歌詞が面白い、歌詞も好きと言える曲はある。列挙は割愛。