続続、桜花舞上三夫のサバイバル生活。
婿養子で妻の名前は「飛来飛来」(ひらひら)。
義父の名前は「兵丁」(へで)。
義母の名前は「和恵内」(わけない)。
義弟の名前は「真剣丁」(まじで)。
会社の金を使い込んだ三夫が姿をくらまして二ヶ月。彼の無人島暮らしなど知る由もない桜花舞上家は、娘と三夫の離婚を速攻で成立させ、マスコミ向けに角倉志家との無関係をアピールした。
68日目
何らかのスキルが上がり、海辺に設置できる簡易的な漁の仕掛けが作れるようになった。
同日午後、ビーチの先の先へ探索を続けたら、海の向こうに島が見えた。
泳いで行けるのかどうか。ひとまず引き返す。
69日目。
最後に雨が降ってから二週間くらい経つだろうか。日照りが続きとうとう貯水池が涸れた。
その一方で、乾燥ラックにより初めて干物ができ上がった。
干物は焼いて食べるものではないらしい。保存には良いものの、腹を満たすにおいては元のものを焼いたのと大差はなく、干物になるまでに数日時間もかかるので、食糧の在庫がおぼつかない状況においては焼いたのをどんどん食べていった方がよさそう、と思った。
ところで、お友達ができた。
70日目。
罠作りが上手くなった。
罠を作る技術が上がった。
罠で獲物を捕らえられる確率が上がったわけではない。
捕獲の効力がろくでなしの罠、それは罠なのか?
昨日できた友達に問いかけたが、答えは返ってこなかった。彼には難しい質問だったか。ふと疑問に思っただけでそんなに真面目な質問じゃあない。気を悪くしないでほしい。
アレンビック。
とは、なにか。自分で作っておいて理解が及んでいない。
海水から真水を蒸留できる? 使い方もよくわからない。
真夜中に目を覚まし野暮用で外に出ると、久々のカモメ。
ありがたや。
71日目。
んー。
72日目。
適当にいじくり回してアレンビックの使い方を理解した。
たき火ことキャンプファイヤーの上にアレンビック本体を設置。
設置した本体に海水等、適当な混ざりものの液体を満たす。
キャンプファイヤー脇に空の容器を設置する。
キャンプファイヤーに火をかけて置いておくと、時間経過によってアレンビックに注いだ液体が蒸留され、混ざりものが取り除かれた液体が空の容器に抽出される。
これで海水から真水を生成することができる。塩分はどこにいくやら不明。
空き容器に抽出される液体はなぜか常温で、すぐに喉を潤すことが可能。
時間はかかるが無尽蔵の海水から真水が作れるので、これで水問題は解決、と言い切れはしないまでも、脱水死の危機感は少しだけ和らいだ。
ただし、日照りが続く限りアレンビック蒸留し続けなければ水分を満たせないわけで、つまりたき火を燃し続けるための燃料=木材を消費し続けるわけで、つまり在庫を気に掛けるべきアイテムが増えたともいえ、つまりそれなりに代償はあるってことで、木材の在庫を満たすために採集に出れば体力を使い、喉が渇き、ああつまり面倒くせえ。
73日目。
ろうそく他、洞窟探索用の道具を一式持ってジャングルの中の洞窟へ。
恐る恐る初めての探索。
中はさして広くなく、薄汚い水たまりがあった他は、ろくな発見はなかった。
75日目。
西の草原に仕掛けた罠にネズミが掛かっていた。
罠スキル向上ね。大したもんだよははは。
76日目。
およそ二十日ぶりくらいと思われる、念願の雨が。
念願の雨! 雨!! 雨やでー!
すぎもっさーん!せんたくもん出てるよー!
出先で降り出したので急いで住処に戻り、ありとあらゆる容器を水受けセッティング。働き詰めのアレンビックには休暇を与えた。
神よ、悪戯が過ぎる。日暮れには止んでしまった。
儚い恵みであった。
汲み置きはとりあえずそれなりにできたので二、三日は安心か。
78日目。
ビーチの先の未開の地を行き、火山に近づいた。
希少鉱石と思われる黒曜石に初めまして。
避暑のため休みながら新しい狩猟具を作った。
これまた作っておきながら使い方がわからない。
79日目。
だとさ。
82日目。
先日の雨によって耕作可能になった畑にサゴヤシの種を蒔き、なけなしの水を与えながら育つのを待っていたが、虫がわいて駄目になってしまったらしい。水が、種が、掛けた手間が、無駄になった。
くそ、なんてシビアな世界なんだ。
いいさやってやるさ、殺虫剤、ああ作ってやるさ。
83日目。
殺虫剤を作るため、材料として必要な気がして(研究済み)、石鹸を作った。
続けて、唐辛子を使って殺虫剤を作った。意外と作れるものだ。
しかしサゴヤシの種が無い。
もう一度採集に行くのが面倒、じゃなくて殺虫剤の効果がいかがなものか、また畑を駄目にする可能性もあるので別の種で試すことにする。
以前、塩ができた時に考え(研究)ついた塩漬け調理法を試した。
待たないとかー。
84日目。
窯で貝殻と新しい土器を焼いたのが、日付が変わった深夜に焼き上がった。
貝殻を石灰にしてどんなもんなのか試してみたかった。
ガラス瓶の方は、なんでもいいのでアレンビックで蒸留した水の保存容器を増やしたくて作ってみた。
85日目。
性懲りもなく罠の設置を続け、新しいのをこさえた。
ろくな獲物は期待できず、ほとんどただの設置趣味と化している。
まともな畑もできていないのに堆肥箱を作った。
やたらと時間が掛かって日が暮れた。
86日目。
何着目かの葉っぱスカートが綻んだので、もっと良いものを作った。
皮素材をだいぶ消費した。お猿様の頻繁なご来訪に期待。
避暑&採集のために日々ダイビングをしていたら、新たな脅威に初めまして。
頭に浮かんだ選択肢を海中に放り捨ててダッシュで逃げた。
ダイビングで採集したカキを開けたら中からパールが。
食えもせんものに価値はない。それがこの世界。でもきれー。
87日目。
先頃塩漬けにした魚が仕上がった。
腐敗することなく永久保存できそうだが試食のためにすぐ食べたところ、消失した。干物同様、完成までに掛けた手間暇に対してのリターンがノーマル焼き魚と大差なくて、このしょっぱさったらもう。
同日昼、ビーチの岩場の洞窟を探索。
なんだかよくわからず即撤退。
88日目。
あっぶ。
90日目。
丸三ヶ月を数える朝を迎えた。
クーラー、干物などのおかげで一応食糧の不安は抜けつつある。
水もアレンビックの自転車操業的自給自足によりなんとか渇きを逃れている。雨は前述76日目に降ったのみでまた二週間、過去ひと月で一度しか降っていない。あんなに風雨に震えた日々が遠い昔に思える。
そういうゲー・・世界なのか。
つづく。