BINTA

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「凪のあすから」

dアニメストア見放題。全 26 話。
P.A.WORKS の未視聴作品ひと通り観るシリーズ。
海中生活可能なエナという皮質を備えて海底に暮らす『海の人』と、ふつうの人間『地上の人』がちょい反目しつつ共存する世界の、ある小さな漁村と海底の村の中学生男女五人+ α たちの恋愛ドラマ。
まずこの『海の人』や海神とか海中世界の設定がおもしろい。「エナがあるから地上と同じように暮らせる」という事以外は劇中では特に詳しくは語られないので、物体の重力、海水以外の液体の扱い、なぜ涙や味噌汁が周囲の水に溶けずに流れたり椀に入ったりするのか、とか、テレビや電気はどうなっているのか、とか物理法則的な疑問に対しては観ている側が勝手に想像で理屈をつけるしかないのだけど、そこらへん語ることにあんまり深くこだわっていない感じが良いと思った。昭和のアニメっぽいというか、童話とか寓話的に思えた。
話は思春期の少年少女の恋愛が主軸にありつつ、この世界独特というかピーエー作品ならではの慣習的祭事もありつつ、後半クール、五年後になってからが本番だと思った。「冬眠」する子としない子に分かれたことで一部関係性が複雑化、と同時に『海の人』の特殊設定を活かした小難しい展開があったりして、子供たちの話ではあるものの、子供っぽくはなくて、おもしろかった。
ちさき の良い子なんだけどどこかずるいというか微妙に利己的なとことか、まなか の無邪気な空気読まなさとか、あかり の頑固さとか、「true tears」の女性陣にも似て、女の嫌なヤバさを滲ませる描写が、シリーズ構成:岡田麿里、らしいなと思った。一方で男は、直線的、直情的 or 寡黙、不器用、っていうのもまた。かなめ は不憫。さゆちゃん さらに不憫。
ピーエー作品らしく最後はみんな収まるところに収まったけれど、なんとなく、可能なら 美海 か 紡 を生贄にしてちょいバッドエンドみたいにしたかったのではないか、と思ったり。・・・それ自分の願望か。
話は「true tears」的、雰囲気は「TARI TARI」的、ファンタジックな昔話的作風は「有頂天家族」にも似たテイストがあり、即死必至の荒れた海の危険な描写は「Another」的でもあり、各話脚本や演出で過去ピーエー作品に関わった監督や作家も参加していて、ちょっとしたピーエーの集大成的作品のようにも思えた。
恋愛話は好みではないけれど、これまた名作だなと思った。

あかり の息子、あきら の CV、石上静香
のちの 雪原の青 のあれがこれか、って出てくるたび思って、可笑しかった。
陸のエナ持ち爺さん、清川元夢
トーンが 冬月 そっくりで、そういえばこの作品の冬眠五年後の少年たち、
ヱヴァ Q のチルドレンたちの境遇に似てるな、と思った。