BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

アサルトリリィ BOUQUET

全 12 話。
近未来、日本。いつだか世界に現れた謎の脅威的存在「ヒュージ」、それに対抗できるのは「リリィ」と呼ばれる特別な力を持つ少女たちだけだった。少女たちは人里離れた専門の学校に集い、校長以外に大人のいない宿舎で、少女たちだけで寝食を共にして暮らす。
主人公 一柳梨璃(ひとつやなぎ・りり)はそんなリリィに成り立ての新一年生。一匹狼的な憧れの上級生 白井夢結(しらい・ゆゆ)と姉妹関係の契りを結び、その人柄を見初めた同級生たちと組んだチームでリーダーに就任するなど、徐々に周囲から注目される存在となっていき・・・、といった話。

全体では序盤と終盤以外ヒュージとの対決はおまけみたいなもんで、基本的に学校内でわいわいやっている作品だった。本来好まないキャッキャウフフと言ってしまえるもので、その点では抵抗があったけども、1話切りせず、結果的に最後までわりと好意的に観ていられたのは、なんでなんだろう。わからない。
抵抗が払拭されたと感じたのは5話だったか、夢結が梨璃の誕生日プレゼントにラムネを買いに出かける回だったことは覚えているけど、その回が特別よかったというわけでもなく、夢結の一人旅の裏で一柳隊のどうのこうをやっているのが、なんか微笑ましかったかなんかそんな曖昧な感覚だったんじゃなかったか。物凄く漠然としたもの。
恐らくは同期の同系統作品であるシグルドリーヴァが駄目だと感じ始めたところだったので、その差というか、相対的に見てこっちはまだましだなー、シャフト苦手だけど結構ちゃんとしてんなー、というような感じで「良いかも」という方まで振れてしまったのかもしれない。

人類を脅かす謎の巨大なやつが突然現れて、謎の力とか秘密のマシンを操れる少年や少女が地球のために戦う、謎のやつはなんなの? 自分のこの力はなんなの? 何のためにたたかうの? などという話はもはやありふれすぎて古典的な部類ですらあって、話や設定自体に目新しさはない。
語る言葉も出てくる単語も専門用語もどっかで聞いたことのあるものが多く、そのひとつひとつから内容の深読みとか心情の推察とかする気も起きない。というかだいたい先行きも深層も察しがつく。察したことが違っていたとしても特に気にならない。何が起ころうと驚きがない。

それはそれでいい。たぶん観たいのはそういうことじゃない。
要は、ありふれた題材の上でどういうことをするか、したいのか、それが伝わってくるものを観たい。それが何であってもいい。タイトルから、演出から、芝居から、できれば全部で示してほしい。
という思考で観た結果のこの作品のそれとは、「百合」。これ以外ない。すべてが「百合」。女の子同士*1のイチャイチャ。ヒュージとリリィが実は同じような存在であるというのも、その二者が戦うというのも、「百合」表現の一種なんだろう。エヴァ使徒の戦いが不器用な少年の対人関係そのもの、みたいなやつ。

たぶんそこがわかりやすかった、掴みやすかったのがシグルドリーヴァよりも良いと感じた点なんだろう。制作陣が何を意図してつくったのかは知らないけど、個人的には以上のような解釈で、その表現的には淡白この上ない百合要素が、コメディ成分としてそれなりに楽しめた。

登場キャラクターが一人一人記憶するのも馬鹿らしくなるほど多くて、その分声優も有名無名入り乱れているのもまたおもしろかった。主役の一柳隊メンバーは舞台版のキャストらしく、起用したのだから使ってやらねばという気遣いで振られたような台詞分量の少なさには、可笑しくもかわいそうにも思った。

*1:ただし、多くの男の妄想上でしか存在しない純心で汚れのない非実在少女。