BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

60's mustache gentleman

前回の続き。
サイケデリックロックを掘ろうということで、ユーチューブでそういった文言で検索かけて、とりあえずそれなりの曲がメドレーになっているような動画がいいなと思って、なんとなく適当に開いた一発目の動画が大当たりだった。


「Gone Groups of the 1960's」

「過ぎ去りし 1960 年代のグループたち」みたいな意味か。時代に埋もれ消えていき、同時代のビートルズほどに今は語られることもほとんどないグループを集めたとかなんとか。
ジャンル的にはオールディーズポップスとか日本で言うグループサウンズみたいなものばっかりでサイケデリックロックとはやや違うけども、結構自分好みで良いのが並んでいた。

ここから順不同に個別に調べてさらに視聴。

Peppermint Rainbow / Will You Be Staying After Sunday (1964)

女性左がメインボーカル、右がコーラスで、ギター男、コーラス男、ベース男の5人組のようだ。ドラムレスなのか、バンドと言うよりコーラスグループで楽器できるやつがいるから持たせてみた的な印象を受ける。曲の冒頭から全編に渡って全員でのコーラスが入っている。この動画は楽曲音源に合わせてテレビ出演時の演奏映像を編集して乗っけたものっぽいが、本放送時も口パクだった可能性は高い。マイク無いし。

しかし曲はとても良い。すごく耳に残る。
2分半、ずっとサビだけの曲構成、コード進行が良い。メイン女性の声が良い。英語はなんとなくしかわからないけど、こんなに晴れがましいメロディーをみんな笑顔で歌っているのに、歌詞には歌い出しから寂しい嘆きが入っているのが良い。
あと「ペパーミントレインボウ」というグループ名も好き。スタンド名にも最適。


Spiral Staircase / More Today Than Yesterday (1969)

これまた良い名前「スパイラルステアケース」。単に螺旋階段のことらしい。
男性5人組。サンシャインポップと呼ばれるジャンルに類するらしい。ボーカルの歌声のキーがすごく高い。スピッツ初期の草野マサムネを彷彿させる高音。

曲を流し聴くために最初はこのボーカルを雑に見ていたのだが、ちょっと待て、バックの4人が映った時に衝撃。ボーカルの真後ろにいるベースのヒゲ紳士。その動き、リズムを取る首の揺れ、そのツラ。ヤバい、おもしろすぎる。どこから連れてきたのか宮史郎。
曲が良いとかボーカルが良いとか、すっ飛ばしてしまう強烈な立ち姿。よく見るとその人だけ全身頭のてっぺんから爪先までフレームに収まっているのも可笑しい。ブルーバック合成したかのような。最もフィーチャーすべきボーカルは軽く見切れて、なんなら照明が少し陰っているほど。いや、現場ディレクターは誰をメインに撮るべきか英断を下したとも言える。
ドラムもそこそこパンチの効いたルックスだが、このベースの前では凡人。ただでさえ可笑しいのに、サビでさらなる衝撃。「♪ Yesterday ~」の部分でベースの口が動く。このヒゲ、ハモっていやがる。やめておなかいたい。
とんでもないお宝を掘り出したものだ。

ルックスでひとを笑うなんて、そんな非道は自分だけか。と思ったが、案の定コメント欄でも "The bass player" について結構な賑わいになっていた。「Love his dancing! Looks like his is stomping some bugs!(こいつの踊り好き!虫けらを踏み潰してるみたいだ!)」などと。万国共通でインタレストなベースプレイヤーなんだね。


The Left Banke / Walk Away Renee (1966)

「いとしのルネ」で知られるそれなりに有名な曲らしい。ストリングスやチェンバロの入るこの曲は『バロックポップ』と呼ばれるジャンルの代表的な一曲でもあるらしい。

曲、メロディーが良い。その歌声が切ない。間奏のフルートがまた効く。Bメロが無くてサビがすぐやってきて、全体にもクドくない。ビートルズの有名曲にも比肩、匹敵しうるスタンダードな良さがあると思う。耳に残る、素朴にして懐メロにして黄金の輝きってのを感じる。

モータウンのコーラスグループ、フォートップスによるカバーでも知られる、と。

なんとなく別物な感じがする。これはこれで良い。


The Flying Machine / Smile A Little Smile For Me (1969)

これも素朴系。日本ではざっくりソフトロックと呼ばれるタイプか。
やはりメロディー、歌が良い。Bメロが効いている。
あと、一瞬しかアップにならないがここもベースの人がおもしろい。池田鉄洋かと。


The Rose Garden / Next Plane to London (1968)

女性ボーカル+男バンドの5人組。これも素朴な懐メロポップス。

ところでこのボーカル。本当に女性だろうか。ぱっと見の体格、身のこなし、そして声の印象は、「女装した男性ボーカル」に思えてならない。


Smith / Baby It's You (1969)

これは前回載っけた中にもあったやつ。
女性ボーカル+男バンドの5人組。オルガン効かせたサイケデリック。ボーカルがド美人のくせにロックな歌唱がかっこよく、最後のシャウトもすばらしくて気に入った。

アルバムタイトル「A Group Called Smith」=「スミスとかいうグループ」って結構投げやりで好き。この曲、オリジナルはシュレルズというソウルのボーカルグループの曲で、ビートルズもカバーした曲とのこと。


おや、この「Please Please Me」は昔買って一時聴いていたはずだが、まったくピンと来てなかった。神ビートルズには悪いが、このぬるいアレンジでは引っかからない。故にそのアルバムもとっくに手元にはない。



以上。

ほとんどサイケデリックロックではなかった。
サイケデリックにこだわって探してみると、少しマニアックにこじらせたのはプログレとかサーフサウンドの方面に行ったり、ソウルにこじれると似非ジャズみたいになったり、歌メロのポップさを強調したのは古いアイドル歌謡みたいになったり、いまいち望むような曲に当たりにくい。それだけ多方面に影響し色んなジャンルに派生した音楽なのだろうが。

ビートルズもサージャントジャンプメーターロンリーハートだかなんだかってアルバムはサイケデリックの類だと書いてあったので試聴してみたら、なるほど確かにそんな音が入ってはいたものの、だからってピンと来たりはしなかった。


あと次々似たようなのを聴いているとだんだんどんなバンドでもどんな曲でも新鮮味や刺激が薄れてきてどうでもよくなってくる。最初の「Gone Groups of the 1960's」も最初だったから幾らか引っかかりが多かったというだけかもしれない。
でもきっと本物はそんなある種のマンネリ感に関係なく引っかかるものがあるはずで、もうしばらく少し探してみるとする。