BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

カードサバイバル 八人目

新章(第2章)。

フォーウ・カドサバ。
門鯖研究所の無人島探査アンドロイド検体、四号機。

かつて謎の無人島で連続不審死した角倉志一家について、事件沈静化後も人知れず水面下で調査を続けた極限サバイバル学の権威を自称する門鯖二千二四(かどさば・ふちぷし)博士は、事件のその年の年末なんたら宝くじ一等前後賞が当たり巨万の富を得た。
『研究所』とは名ばかりのバストイレなし三畳の廃れたコンテナボックスを捨て、『アンドロイド制作手引』と表紙に書いただけの成人図書スクラップ本一冊のみを片手に、とある山中の廃体育館を買い取ってリフォームしたそれなりに立派な研究所風の施設兼新居に移り住んでおよそ十年。浮浪者同然だった小汚いおっさんが一体何をどうやったのか、人造人間の実験体を稼働させその筋の学会を驚かせたとかなんとか。
稼働して一歩目を踏みしめた直後に「脱水死」と言葉を発して爆散した一号機。
稼働直前に思考モニターが拒否反応を示し本稼働することなく爆散した二号機。
ひとまず稼働し一般的な社会人的生活をさせてみたところ適応し、これはお手伝いロボットにぴったりということで博士の伴侶としようとしたところ即座に拒否反応を示し爆散した三号機。
調子に乗って性的パートナーとして作ってみたが好みのルックスにならず、折よく舞い込んだ無人島再調査の依頼に応えてやけくそ気味に例の角倉志兄弟風に作り変え「じゃあこれで」の一言で例の無人島に追いやr送り出されたのが、今回の主役・四号機である。
廃体育館横の廃プールを改装した特別開発室から生まれたことから「プール・シリーズ」と呼ぼうと博士が所員に通達したところ、鼻で笑われた。



スタート。

人造人間フォーウ。元の人間の記憶はないが無人島生活のあらゆるノウハウはデータとしてインプットされている。

はずだった。


13日。


データは不十分だった。
或いはインプットのミスだったのか。
フォーウは野生生物に弱かった。運悪く遭遇率が高かったとも。
天候の不運もあった。この時期に乾季になることを博士も誰も予想できなかった。

脱水によって機能停止後爆散したフォーウの脳の記憶チップを奇跡的に回収し精神データを解析したところ、最後に記録された言葉は「序盤なのに雨降らんすぎやろ」、だった。

尚、殊更に運悪くフォーウの爆散に巻き込まれ博士も粉々に爆死。残された門鯖研究所には既に数体の兄弟機が所員兼探査員候補として自律的に生活をしていたはずだったが、フォーウと博士の死後行方不明となった。



つづく。