BINTA

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春アニメ終了2

イエスタデイをうたって

ざっくりガワだけを見れば、わずかに年齢差のある二組の若者男女の四角関係な恋愛話。それぞれが片思いから始まり、それぞれに煮え切らない展開を重ね繰り返し、一応最終的に二組決着がついた。
さて一体この作品をアニメとしてどう捉えたものか。ストーリーは恐らく原作準拠だと思うので、くっついて当然のふたりはくっつかずに結局そっちかいというツッコミや反論は野暮というもの。いやいや、なぜにハルというキャラクターをわざわざ魚住に当て込んで関係を複雑化する必要があったか、と考えればこの結末は言わば順当。なんならしなこって女はむしろハルよりも面倒臭いタイプのように見えるし。そういう意味では最終話の魚住自身による気づきと決断は、意外なほど賢明な英断だったとも思う。
といったようなストーリー面の感想や評価はつまり原作の話なのであってアニメの感想にはならない。そっちの方が色々思うことはあって感想文としても書きやすいのだけど、まあこの際正直どうでもいい。そのストーリーありきで、アニメの演出、アニメとして見せるものはどうだったかといえば、それはもう率直に言って丁寧でよかった。過はあっても不足はない。どのキャラクターも肝心なところで言葉少なだったり言葉足らずに感じるところがあったけども、そういう時には必ずといっていいほどじっくりと間を取る。台詞じゃなくて絵、キャラクターの目が口を開けたように語る。どちらかというと実写ドラマ的な手法や技法で見せていたように感じた。恋愛ドラマでも CX の下世話な感じではなく、昔のTBS金曜ドラマ系の感じ。その感じがわりと好きだったので、1話から見入って惹かれたのはそこらへんが原因かと。
あとはやっぱり1話で思ったのと同様に、痛かった。ぐさぐさ突き刺してくるものがどのキャラクターにも、各話エピソードの端々に何かが含まれていることが多く、それが自分の忘れたはずの記憶やら思い出さなくていい思い出やら消したい似たような経験やらを掘り返してくるようで、心臓の表皮をペリペリやられるかのような味わいたくない苦い痛みが、あった。ただそこは動画の利点か、それを感じた瞬間で止まることなく強制的に次のシーンへ流れていくので、柔らかめの絵のタッチと決して激しいことにはならない演出のおかげもあり、その痛みが強く残ることはなかった。
でも、以上のように思いつつも、本音を言えば順当にすんなりいく方の結末が見たかった。じゃあ残される二人はどうするのか? その順当が話としておもしろいのか? ということになるだろうが、そんなのは知らない。そこをおもしろくするのが作家でありアニメスタッフの仕事。この作品については、この結末こそがおもしろいという結論に至り、こうなったんだろう。
納得。十分。良い作品だった。


八男って、それはないでしょう!

序盤の幸運により、そこからの繋がりで強力な後ろ楯を次々得て、そのひとらに転がされるままに何事もうまく運ぶ。ずっとそんな調子で全然緊迫感がない。ほのぼの楽しい雰囲気を楽しむものかといえばそうでもなく、最後も最後でそれまでの流れと変わらず、ぬるい締め。
作画の甘いところと同様に、肝心な場面の演出が雑に感じた。毎回一話の中での緩急の尺配分が悪かったのかも。テンポが悪いわけではなかったが、終盤話数はちょっと長男が無駄怨みを溜めるシーンがしつこすぎた気はする。タイトル回収のため兄弟や家族に縁や怨恨を与えたかったのはわかるが、無理矢理な感があった。


神之塔

1話切りしたけど気になって観直して撤回、そして観続けて、よかった。何話かのちに少し調べて韓国漫画原作と知り印象変わりそうになったけど、おもしろけりゃ国とか関係ないだろうと、気にせず見続けてよかった。色んなキャラの性格の端々に国民性が垣間見える、という見方もできるけど、そこも国は関係なくてキャラはそれぞれ個人で人それぞれそんなやつもいるいる。
つまり、よかった。初回の予想を覆してだいぶ楽しめた。しかしだからこそ、この大変に中途半端な終わり方は困る。ラヘルがエンディングに入る締めっぽいモノローグを語り出したところで「おい!待て!ここで終わるな!」と思わず声に出して画面に向けて言った。まさに突き落とされたヨルと同じような感覚。「答えは僕が見つける」とヨルはまた立ち上がったが、そうじゃあねえよ、その答えを出せよワンクールで。
だがどうやらアニメワンクールでまとめられるような話でもないらしい。独特の画調もわりと気に入ったし、津田健次郎吉野裕行がそのひとららしい位置に配されたキャスティングもよかったので、ぜひ2期を期待したい。


グレイプニル

全体の設定やテーマ、各話の流れ、構成など、神之塔と同系統だと初回から感じ、そのように思ったことを何度か書いてきたが、最終的に終わらせ方まで同じだった。そこに辿り着けば僕らは答えを見つけ出せる、とかなんとか。いや、だから、一作品の終わりなんだからその答え、出そうよ。俺たたエンドはよそうよ、って武蔵野なアニメ制作陣も言ってたじゃん。
原作モノでやはりワンクールの作品にまとめられないというのはしかたがないが、それならばちゃんと続編を近いうちにできるようにしてほしい。願わくは最後まで制作できる算段が見積もれてからやってほしい。先を知りたきゃ原作漫画買ってね読んでね、ということなのだろうがアニメにしか興味がない人間としてはそれでは困る。
とは言え、そんなことは置いておいて、最初に能力者バトルモノかと辟易したけれど、この作品は実質的にはそれは上っ面の飾りでしかなかった。特に後半話数に至って主人公の不明だった過去が明らかになってくると、サスペンス的な色合いが濃くなり、宇宙人というオカルト要素も手伝って、なかなか最近他では感じたことのないような薄ら怖さを味わえた。なんというか、リング~らせん~ループのような、謎が明かされるたびそこまで見てきた世界よりもうひと回り大きな枠があることに気づかされそっちが本筋かい、みたいなうっすらとした衝撃。それだけに、こんな終わり方は納得しがたい。続きやれよ作れよはよ。
ただ、妙なエロ要素は要らなかったな。少年誌の十代読者層へのサービスなんだろうとしか感じなかった。台詞におけるそういった方面の言葉遊びの数々も、ニコ生で視聴者コメントと共に見るような場合は楽しいのだろうが、ひとつの作品として楽しむ上では目障り耳障りに感じることが多かった。



以上。
世情により放送中止の憂き目にあう作品も多かった中、いずれも内容や出来の如何に関わらず全話放送できただけですばらしいこと。拍手や称賛を贈りたい。贈りたい気分なだけ。
続きが観たいなどと書いた作品が結構あるが、ハマるほど気に入るような作品はなかった。イエスタデイとグレイプニルは途中その域に達するかと感じたところもあったけど、結果的にそうはならなかった。