BINTA

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ありふれた職業で世界最強

2019 年夏季放送、全13話+総集編1話。
なんらか危機に瀕したファンタジー世界に召喚された現代日本の高校生たち+担任女教諭。その生徒の一人、南雲ハジメは冴えないいじめられっ子の少年。異世界転移によりクラスメートたちが各々特殊職と強大な力を得る中、南雲に与えられたのはこの世界ではありふれた「錬成師」という職。
戦闘で役に立たないからと疎外され、クラス総出での迷宮探索において出くわしたボスと共に奈落の底に突き落とされてしまう。地下のモンスターに襲われる中、元の世界に帰りたい一心で錬成の能力を駆使して戦い、生き延び、やがて能力を拡張、亜人の仲間も得て誰にも負けない存在になっていく。といった話。

異世界転移のしかたにも幾らかパターンがあるがこれは初めて見る、漂流教室みたいな1クラス丸ごとの転移。導入こそ珍しいものの、内容的にはだいたい「盾の勇者の成り上がり」と似たような、逆境からの闇落ち気味下剋上もの。
「ありふれた職業」と題しているけど、そこには『この世界では』という注釈が付くのであって、様々なものを魔力で作り上げる「錬成」の能力は一般的現代人にとってはかなり特殊で有益な力なわけで、加えて生き延びるために取った手段が「モンスターの肉を食らう」で、『食ったらそのモンスターの能力を取り入れて使える』という「転生したらスライムだった件」などで既に強力さが証明済みの多分に卑怯な仕様まで兼ね備えるので、正直タイトル詐欺。
ちなみに転スラは 2018 年 10 月 ~ 2019 年 3 月、盾の勇者はこの作品の直前 2019 年 1 月 ~ 6 月。この作品は KADOKAWA 系列ではない、ということでわりとパクリ感強い。
主人公の仲間になる少女たちは、強力不老不死のヴァンパイア、パワフル半裸ウサギ亜人、変態竜魔女、謎の魚人風と種族は様々だけど、キャラ的にはウィスパー寡黙系、元気モリモリご飯系、ドMの変態、ただの幼女と、それぞれこういう作品ではよく見るもの。*1

しかし注目すべきはスタッフクレジット。その最後にこう出てくる。
『ありふれた製作委員会』と。
1話目でこれを目にして笑った。「ありふれた職業で世界最強製作委員会」でも「ありふれたアニメ製作委員会」でもない。このような作品をつくること自体そのすべてにありふれた製作委員会、と言える。
だから登場人物や世界設定や話の展開がどれだけ既視感に溢れていようと、元からそういうものを作るつもりですからね委員会なのだからしかたがない。
いやいやそんなもんギャグ的に名付けただけですって、これはこれでパクリとか似通った要素とか既視感とか関係なくちゃんと作ってますって。と叱られるかもしれない。実際それなりにちゃんと作ってある、はず、とは思う。でもこの「ありふれた製作委員会」を意識して見ると、見飽きたようなすべてを許せてしまうような気がしてくるから不思議。

例えば、この作品、昨今珍しく OP / ED を全話一切カットしていない。毎話ちゃんとアバン~ OP で始まり、ED には特殊 ED など余計な演出を凝らさず毎度同じ ED 。どうだこのありふれたアニメ感。とでも言わんばかりの。
主題歌もちゃんとしてはいるが、13 話聴き続けても全然耳に残らないよくある異世界系アニソン。ありふれてんなー。
声優は知らない若手が多かったけども、いずれのキャラもこの手の作品らしいありふれた声と芝居ばかり。端々のキーキャラに至るまで特別可もなく不可もなし。
じゃあさーそれつまんねえのかよ、と問われれば無碍には切り捨てられない、一応おもしろいと思えるところがないわけではなかった気がする。具体的にどのへんが、とは答えられないが。

逆に気に障った点を挙げると、敵、CG のモンスター。手描きじゃないと駄目とは言わないが、アニメ背景に馴染んでいない CG もろ出しな CG で、動きももろに CG で全然迫力がなく、戦闘の緊張感も伝わってこなかった。ジビエートかと思った。

それと、主人公のハーレムモテモテ展開にも呆れる。にも関わらずほぼ欲情する様子もないのが不自然に思えた。こいつ15とかで元根暗なのになんでこんな半裸でたわわとか丸見えとかに接して一切動じることがないんだ、と。
んで最終的に人間の本命ヒロインが実はずっと好きでしたって何の説明もなくて意味がわからん。風貌も人格も変わって非道な所業もやっとるわけだからむしろ嫌えやうらやま。
言うなればこの点は現実的に全くありふれていない。が、この手の作品ではやはりありふれている。で、ありふれた製作委員会だから、文句は通らない。

そんな最後の罪深い終わり方に納得いかず、ゲスクラスメートも始末せず残っており、最終的にあまり良い印象にはならなかった。2期の予定があるらしい。どうしたもんか。

*1:こんな並びをよく見るようではさすが日本、つくづく終わっている。