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あしたのジョー2

1980 年放送、全 47 話。第1シリーズから十年後に制作。
話は前作ラスト時点からの完全続編ではなく、少し戻って VS 力石戦後から始まり、テンプル PTSD ~ VS カーロス・リベラ戦までの展開は一部省略しつつフルリメイクされ、別時空っぽいところもある。
またちょくちょく回想として段平との出会いや少年院時代などの要点シーンもリメイク挿入されるため、これ一本でもそれなりに全体の話を理解できるようにはなっている。

作画の線や音響の質感はまさに 80 年代アニメのものになっていて、主題歌も前期 OP は例のサンドバッグに浮かんで消える渋い 70 年代歌謡とは全く異質な 80 年代ポップス感覚の軽い曲調で、1話を観始めた時はなんじゃこりゃと多少拍子抜けした。
が、前作から続投した出崎統監督らの手腕や原作者監修の力は大きく、ジョーと段平の声優も変更なし十年のブランクを感じさせない熱演で、80 年代アニメ風味などさしたる問題としない根本の強さが絵に、ドラマに、全話に渡って表現されており、第1シリーズと同等にしっかり楽しめた。ED の方の主題歌はよかったし。

話の本筋はジョーが世界の大舞台へ ~ VS ホセ・メンドーサに向かうという道のりではありつつ、当然ほかにも点々と対戦がある中で、前作では力石徹の存在感で霞みかけていたジョーの戦う理由だとか向かうあしたが何なのかとか、白木葉子は何なのかとか、そういうややモヤッとしていたけども重要だった部分の答えを一話ずつ丹念に語っていたように思う。
終盤はバンク回想も多く、入れなければ五話分くらい省略できたんじゃないかぐらいに思ったけども、それがあったことによって都度内容を再確認し、しっかり把握した上でラストシーンに至ることができたのでそれはそれでよかったと思う。

作画も凄まじいものがあった。特にここぞの場面で入る回り込みカメラワーク、中でも 44 話のジョーと葉子がふたりきりで話すシーンでのそれは話の内容と共に非常にしびれた。その後の水を飲んだジョーがコップをガラス板に置いた時の「カチャッ」という音も、なんかわからんがとても良かった。
語り草になっている止め絵は前作から引き続きでかっこいいけども、なんなら決めになるシーンは動画の一枚一枚にしてもかっこいいので、もはや区別はない。そういうの以上に、毎話Aパート終わり(CM 前)と ED 前に使われるイラストタッチの一枚絵が、惚れ惚れするほどすばらしかった。全話分 PC 壁紙にして定期的にランダムで変わるようにしたい。ので原画ください。

ジョーと段平以外の声優、特に西の声が第1シリーズとは別人でどうなんだと思ったりもしたけども、カーロス中尾隆聖に笑ってしまうこともあったけども、時折塩屋翼とか古谷徹とか鈴置洋孝とかが同時代の別作品を想起させる声を聴かせてきて気を取られたりしたけども、最後まで観ればそれも大した問題ではなかった。

本物。
話が強く、キャラがさらに強く、それを描いた絵がまたさらに強く、演出も強くて劇として強力。イデオンに肩を並べる。と、調べたところこれ、イデオンと同じ年、半年遅れで放送されたらしい。当時物心がつくにも程遠かった自分にとって、そんな頃にそんなすげえのが同時放送されていたなんてわかるはずもなく。でも四十年遅れでも、理解できてよかった。観ておいてよかった。観られてよかった。
きっかけをくれたメガロボクスにも感謝。