BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

さよなら私のクラマー

全 13 話。
日本女子サッカーの元名選手がコーチとして就任した出身高校の弱小サッカー部、そこで出会った4人の少女たちが、コーチと共に女子サッカーの地位向上を願い望みながら、練習に試合に日々明け暮れる話。

漫画原作。そうとは知らず観て良い作品だと思ったのに、アマゾンレビューの低評価はなんなんだと思ったら、原作絵の再現度合いの低さが原因らしい。
原作ファンや初見1話切りな方々のおっしゃることもわかる。たしかに一見、1話から不安にしかならない作画だと思った。動きの迫力については観る人によって感じ方が違うだろうが、一見して「原作と違う!なにこの貧弱作画!」とか脊髄反射した原作ファンが、その一瞬でできあがった固定観念のもとに観続けたところで迫力やらも感じることができないのは無理もないこと。

そういう意味では原作知らずな自分は幸せだった。これはこういうもの、ということで楽しめたから。基本的にスポーツものという感覚は捨て、主にメインキャラ4人によるサッカーギャグアニメなんだなーと、かなり早い段階で判断した。
だからどんなにデッサンの崩れたような体勢のカットが出てこようとも、試合進行にスピード感がなかろうとも、全然大丈夫だった。笑わせてくれるポイントのひとつにすぎなかった。

テンポが悪いという意見には賛同しかねる。ゆるい空気感のコメディなんてこんな感じじゃん。むしろ悠木碧なんていうハイテンポ声優を交えておいてこのルーズなノリを出していたという点ではもっと評価してもいい。黒沢ともよという演技派を起用しておきながら全話に渡って台詞がわずか、しかもほとんどが低音毒づきっていう点もすごくおもしろかった。
主役の恩田のひとはよくわからないけど十分はまっていたと思うし、越前役の若山詩音は DYNAZENON の夢芽の無表情とは真逆の明るいキャラクターが可愛らしかったし、大半*1どのキャラ/声優も芝居に関してテンポ感が気になるなんてことはなかった。

漫画原作なので、原作者の意図した読ませるテンポと、アニメ監督が一話 30 分尺にまとめる上で演出したテンポが異なってしまうのはこれまた無理もないこと。原作読者が観て感じる漫画とアニメのテンポ感の差異ってのはつまり、原作を読んでいる時のテンポをベースにしてしまうから生じるもので、それを「許せない」「がっかり」と言う人が出てくるのは漫画原作アニメにおいては当然というか必然というか。
アニメスタッフが原作者を交えてテンポや芝居についてすり合わせしたかどうかは知らないけど、長い準備期間を経て作られるのがテレビアニメ、ましてや同時期に劇場版も作っている作品なので、これで OK とするまでにはそれなりに議論や打ち合わせを重ねているはずで、このアニメはこれが正解なわけで、これが合わないという読者については視聴対象層として考慮されていないんだろう。縁がなかったってことですよあなた。

なぜか原作読者批判、アニメ擁護みたいな書き方になってしまったけど、正直そこらへんはどうでもいい。熱心な原作読者がいるくらいなので原作の話がしっかりしているんだろう。ギャグ方面抜きでも女子サッカーの話としてもおもしろかった。
自分がサッカー自体に詳しくないせいか、動きや技がどうだとかはわからないし、迫力や躍動感だとかはボクシングや体操のアニメを観ても何も感じることがない鈍感マグロ視聴者なので語れることはないが、この作品、どちらかと言えばプレイヤー同士の思考の読み合いが試合展開のキーになっていたように見え、だからこそその思考を裏切るプレイだとかボール運びの切り返し方は、動きのテンポやら迫力など気にせず素人目にも楽しめるものになっていたと思う。

でも肝はやっぱり登場人物、キャラクターだな。そりゃ当然、サッカー目当てでアニメ観るなんてない。目当ては話であり芝居であり、アニメだ。
メインキャラの生徒4人がとても良いキャラだった。4人でのぬるいドタバタ、毒づき合い、口には出さない認め合い、あと団結した時の不思議な無敵っぽさ(実際はわりと誰にも敵わない)。女子高生4人主人公ものってのはいつだか、京都系の何作かのビッグヒット以降定番になったと思うが、その系譜においても良い4人だったと思う。声優もよかった。ってそれは既に上述済み。

そこそこ気に入ったので続編を期待したいが、読者があんなにうるさいんじゃあ無理か。制作スタッフ総とっかえでなんとかなるかもしれんが、そうなると作風やテンポやらが変わって別物になりそう。どちらにしても期待はできそうにない。
劇場版はこれの前日譚らしいのであまり興味はない。

*1:大半ね、大半。一部除く。