BINTA

BOOTSFIGHT IN THE AIR

かげきしょうじょ!!

全 13 話。
漫画原作。女性のみで歌劇舞台を繰り広げる「紅華歌劇団」、その団員候補生を養成する「紅華歌劇音楽学校」に 100 期生として入学した十代女子たちが切磋琢磨する様を、各々の過去回想など交えつつ描いた作品。

演劇系作品って、アニメ/ドラマに限らず、その舞台本番を劇中でまるまる流すことは不可能(可能なはずだが作品枠が本番そのものを見せることを主旨としていないので尺的にもカットせざるを得ない)なわけで、よってキャスティング面でも「べつに本番の全力演劇芝居をやってもらう必要はないから」みたいなことでタレントの人気や話題性を重視した感じになって、脚本もそこから「じゃあこういう本気のシーンはやれないな、いらないな」みたいになって、結果どうでもいい日常もの寄りになって「演劇題材にする必要あった?」っていう作品ができてしまう、ということがよくあるような気がする(100 パー憶測&個人の感想)。例によって具体例は挙げない。二つ三つしか知らないし。

だからこの作品もきっとそんなもんだろう、という感覚で観始めた。
が、1話、2話、あれ? 思ったよりなんか良い、3話でタイトル通り「過激」な感じの良い違和感を覚え、4話で完全に持っていかれて、以後毎話どこかで必ず泣かされ、同期他作品にはここに肩を並べられるレベルのものがなかったこともあり、7話頃にはもう今期はこの作品しかないだろう超えようがないだろうとなり、最高だろうとなり、最終話も手堅く決めてくれて、いや今期と言わず自分的アニメ視聴史においてもそこそこ高いとこに置ける作品だったなー、という結論になった。

どこがよかったか。
まず話、ストーリーが、あ、いやそうでもないか。過去に他の何かで観たような聞いたようなエピソードに似た話が多かった。が、それはもうこの時代、この年配視聴者にとってはよくあることなので目を瞑る。瞑れる作品だった。
話それ自体はともかく、語り口がうまかったな。特にモノローグの使い方がよかった。後から考えてそういえばというくらいのうっすら地味な良さだけど、これは評価点としてでかかった気がする。
全体もまさによくできた舞台脚本のごとく練り上げられた作品で、役者陣の芝居とその演出もその出来に応えて十分な熱演だった。それとちょくちょくギャグを挟んで、熱く走りすぎる空気をスルッと外してくるのもよかった。

登場人物、キャラクターがわかりやすいのもよかった。
主人公、一人は元アイドルで暗い、一人は歌舞伎系ででかい明るい、準主役は双子、歌うまいけど卑屈、ツンケン努力家、真面目委員長。これらの配置とバランスもよかった。が、まあそれは強いて言えばみたいなところで、実質的には結局その中の一点。
渡辺さらさ。いやこのキャラクターももはや珍しいものでもない。その役を演じた千本木彩花の声、芝居がとてもよかった。とても巧いかどうかはこの際問題にしない。過去色んな作品で見かけた名前で、中には役とその声優を認識して観ていた作品もあるが、いずれも印象は「べつにこいつじゃなくてもこの役は誰でもよかったろう」と思うばかりだった。
ここでの渡辺さらさ役は、早い話がはまり役だと感じた。どこでそう感じたのかは具体的にはよくわからないけど、特に奈良田愛と真面目なトーンで向き合う時などの、暗くなりそうな話を明るさを持ち合わせたまま語る感じというか。いや上手く言えないな。また観たらわかる。

で、対する奈良田愛。もちろんこいつもよかった。台詞、発言的には全く主張がないながらも、花守ゆみりという無駄に主張の強い声が当てられていることで、キャラクターのアイドル性とかスター性が本人の意思とは無関係に滲み出る感じがあって、うまいキャスティングだと思った。
そう、このさらさと愛のコンビ感は、ゆるキャンのなでしこ&リンのそれと似ているものだと思った。花守ゆみりの役柄的には真逆なところなんだけど。ああそういえば、さらさ=千本木彩花に感じた良さは、各務原なでしこ=花守ゆみりのやつと同じかもしれない。要するにこういう底抜けに明るいくせにその奥底に何か妙な闇を眠らせているやつに弱いのか。底抜けてねえじゃん。

あと ED 曲もよかった。歌詞と歌い手が話数ごとに変わっていることには終盤まで気づかなかった。よかったというくせにろくに聴かずにいた時もあったし。
OP 曲は好きになれなかったが、最終話のエンディングには合っていたので、口惜しいがこれもしっかり考え抜かれた選曲であったと認めざるを得ない。

他にもあるけどだいたいそんなとこ。
続編やってほしいとは思いつつ、こういうのはたぶんこの予科生という下級クラスくらいの話が最もおもしろいところなんじゃないかなーとも思え、期待より不安が大きいかも。