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SEESAWSCENE

2021 年という未来の時代に、また CD を買った。今年2作目。

See-Saw Complete BEST

See-Saw Complete BEST

  • アーティスト:See-Saw
  • フライングドッグ
Amazon

今年新発売の作品ではない。昨年発売されていた最新ベスト盤。一昨年 2019 年に十数年ぶりにメンバーの二人が共演し、その流れから See-Saw として一夜限りの単独ライブも行い、そこで根強い人気を再認識してか、レコード会社的に商機ありと見られたか、単独ライブから約半年後にリリースされていたものらしい。
全然知らなかった。わけでもなく、なにかそんなニュースを目にしたことがあった気はするが全然覚えていなかった。

See-Saw梶浦由記石川智晶
うちのライブラリには大昔に iTunes で買った、この方々の最たる代表曲であろう3曲のアニメ主題歌が入っている。そのアニメはいずれも観たことはない。そして買ったには買ったがほんの数回しか聴いていない。
また梶浦由記に関しては FictionJunction YUUKA の頃に、石川智晶「ぼくらの」タイアップの頃によく聴いていてそれぞれそこらへんは CD を買っていた。

今回に関してはその以前少し好きだった頃のことや一昨年のライブとかの話題とか全く関係ない。
大昔のとあるラジオ番組の音源を聴いていたら放送当時の CM が入っており、この方々の「キライになりたい」という曲がかかっていた。べつにその時初めて知ったわけじゃない。その曲のシングル発売当時のテレビ番組で歌うのを観て聴いていたのをよく覚えている。

これだ。

この当時に買おうかどうか迷ったような記憶があるようなないような。
まあそれもどうでもいい。その大昔のラジオのその CM についてもまた、べつに最近初めて聴いたわけじゃあない。ずっと昔からそのラジオ番組の音源百何十回分を何度も何周も聴いており、その当該の CM を聴くたびに中古盤を探そうかという気になるもののその回を聴き終える頃には忘れてしまう、ということの繰り返しだった。

今回先日またそのラジオの音源を聴いた、というわけでもない。一番最後に聴いたのは半年とか一年とか前だったか。なのだけど、先日仕事中にふっと頭の中にその CM で聴いたラジオ音質の「キライになりたい」が流れた。流れたっつうか、急にふわっと浮かんだ女性ボーカルのフレーズ、これなんだっけどっかで聴いたやつ、なんかラジオのあれ、ほらあのえーと、みたいに思い出したのだった。

と同時に、そうだそれずっとどっかでちゃんと聴こうと思っていたんだ、ということを思い出した。例のラジオ番組と関係ないところで思い出せたので、やっと試聴欲求が潰えることなくメモすることができた。
で、まずはユーチューブ。上の実演動画。あーこれだー。
脇の関連動画リンクから他のも聴く。

これも放送当時に観たな。
良いのにな、なぜ買っていなかったんだろう。


ふと最近のお二人の近況が気になりウィキペディアスマホで流し読みしつつ、そこにデビュー曲として記された「Swimmer」、そのタイトルがついた動画を開く。

まだ3人だった時代、デビュー当時? かどうかは知らないが、良いじゃないかこれ。と率直に思った。思ったのは今。先日。デビュー当時は知らない。
こんな曲をやっていたのか。二人ともファッションを含め今と多少芸風が違う感じがするが、それは全国放送のテレビ向けのこの時代のミュージシャンらしい振る舞いだったとも思う。今のミュージシャンが今のテレビでどんな振る舞いをしているか知らないので比較してどうこう述べることはできないけど。

この今更ながら鮮烈な曲を耳にしつつウィキペディア、2020 年ベスト盤リリースとの情報を知る。続けざま調べたらそこに「Swimmer」も「キライになりたい」も入っている、と。
速攻で音源を買おうとアマゾンでダウンロード購入しようかと試聴したところ、3枚組のうち欲しい1枚目2枚目はなぜか試聴できない。iTunes で検索かけたら試聴できないどころか3枚目しか配信されていない。アマゾンの方も単曲購入ボタンが付いているのは3枚目だけだった。

これではアルバム購入して1枚目2枚目の音源が付いてくるかわからない。
しかし CD で買いたいというほど欲しいかというとそうでもない。そうでもないが、中古盤漁るのは面倒くさいし、どうせ買うなら収録曲が厳選された過去のベストより昔のアルバムを丸々収録した今回の最新ベストが良い気がする。が、買ったからといって何回も聴かないだろう、気に入った曲でも 10 回聴けばいいほうだろう。それで3枚組五千円とか。
など、うだうだうだうだ数日悩んだ末に購入した。


以上序文。


See-Saw Complete Best 「See-Saw-Scene」

www.jvcmusic.co.jp

CD 3枚組、全 37 曲収録。特典商法常套のこの時代に映像ディスクなど付属せず真っ向勝負、4,950 円(税込)。強気にも見えつつ時代錯誤な殿様商売とも言える。そこはあちこち事情もあろう。アマゾン割引に免じてこれ以上は言及すまい。何様。
売りとしては「初 CD 化楽曲収録」、そして初回限定生産分のみブックケース仕様。装丁はフライングドッグらしい、同レーベル他アーティストの商品でも見たことある感じのつくり。同じレーベルの作品を商品番号揃えて並べて愉しむ CD マニアにはうれしい仕上がり。しらんけど。

CD のほかには分厚いブックレットが入っている。収録曲全曲の歌詞、全曲解説、石川智晶梶浦由記それぞれによるコメントが掲載されている。石川智晶が文頭で語っている『See-Saw としてこのようなメッセージを綴れるのは恐らくこの場所が最後だと思います。』というのが気になる。「静寂はヘッドフォンの中」の曲解説にも『実質 See-Saw としては最後の録音となった。』と書いてある。二人での活動はもうこれっきりと。それともしぬの?

あと驚くべきはジャケット、と中の写真。どうやらこのベスト盤のための 2020 年撮り下ろしらしい。完全な新曲が入っているわけでもない、謂わば旧作の有り合わせなのに、そのために新しいガワを用意するとは珍しい。いや、自分が滅多に CD を買わなくなって久しいから知らないだけで昨今のベスト盤はこういうものなのだろうか。


CD 1 枚目は、調べたところどうやら 1993 年発売の BMG ファンハウス時代の 1st アルバム「I HAVE A DREAM」の収録曲全曲を曲順もそのままに丸々収録したものらしい。らしいと言うのは、調べたらそうであろうことがわかる或いはファンならそうだと判断できることなのに、商品解説等公式の情報にその旨の記載がないから公式的に『 1st アルバム全曲収録』なのかどうか確証がない。でもきっとそうだろう。

「Swimmer」はこの1曲目に入っている。
のちの時代にも聴ける石川智晶の歌謡歌手的であり母性的とも言えそうな粘り気のある低音は、既にこの頃から特徴的。一方で若さ瑞々しさも感じさせる伸びのあるハイトーンの歌い上げにも耳を奪われる。この声の魅力を引き出し確立させたのは当然梶浦由記なんだろう。
作詞作曲共に梶浦由記。特にサビ頭で顕著だが母音「あ」を高らかに伸ばす歌声が非常に気持ちいい。気持ちいいのにサビ頭を過ぎるとサビ中の気持ちいい音では母音が「あ」の詞はなかなか出てこなくて、サビ終わりに曲名を歌う「スイマー」でやっと出てくる。しかも、サビ終わりだからケツの音は多少落としてもよさそうなところを、終わり前に一旦ぐっと落として最後にガッと上げているのはやはり石川智晶の「あ」の発声の気持ちよさを考慮した上での、もったいつけたメロディー運び。聴かせたい部分と、そこでの思い切り、それ以外では抑えること、その押し引きを心得ている、のではないかと思った。
この曲はしかし、もし冒頭がサビ始まりだったら森川美穂の「ブルーウォーター」と似ていると感じたかもしれない。なんならこの曲がナディアの OP でかかっても違和感はあまりなさそう。そういう意味では後々ブレイクするよりずっと前、最初の時点からアニソンアーティストになる素養はあったんじゃないか。客と時代がついてきていなくて、「あんなに一緒だったのに」に至ってやっとリンクしたってことだ。はい知らんけど。

2曲目の「La La Africa」も曲名をサビに持ち、やはり石川智晶の「あ」の高らかな発声が耳を貫いてくる。初めて聴いたけど気に入った。編曲:小西貴雄による曲中のアレンジはやはり 90 年代ポップスらしいけれど、アフリカ風な音が盛り込まれたイントロは後の梶浦作品と同じ匂いがする。

もうひとつの目当て「キライになりたい」。今回改めての感想は特に無い。目当てをちゃんと聴けた。よかった。それくらい。
しかしなんだ、ここからもうのちのアニソン期の、梶浦節な See-Saw の曲調を展開していたんだな。と前述したラジオ CM 音源を聴くたびに思っていたような気がする。そうかと思ったら、作曲は二人の共作なんだな。


CD 2 枚目は 2nd アルバムそのまま、ではないらしい。See-Saw の 2nd アルバム「See-Saw」はシングルをリミックスで収録していたりのミニアルバムだったらしい。ここではそのアルバム曲を数曲含めつつ、シングル曲はシングルバージョンで 3rd「Chao Tokyo」からファンハウス期最後の「また会えるから」まで、そして最後に初 CD 化曲を収録。

初 CD 化曲「新しい予感 ~Only at JUSCO~」。
1996 年レコーディングの CM 用楽曲とのこと。「JUSCO」はつまりだからジャスコで、ジャスコの CM 曲だったらしい。全然知らなかった。
CM ソングだからこそか、曲名に入れるだけあってか、サビ終わりで「ジャースコー♪」とちゃんと歌っているのがおもしろい。後年の二人なら絶対に受けない、二度とない仕事だろう。まさにレア曲。図らずも、買っておいてよかった CD だった。と言えるかもしれない。


3枚目はゼロ年代、アニソンアーティストとして復活後の楽曲をまとめた世間一般イメージの See-Saw らしいベスト盤。個人的にはどうでもいい盤。ついで盤。
代表曲3曲「あんなに一緒だったのに」、「君がいた物語」、「君は僕に似ている」以外は今回初めて聴いたけど、特に思うことはなかった。同時代、石川智晶のアルバム「僕はまだ何も知らない。」が強すぎて。



結論としては、ファンハウス時代の2枚のアルバムにシングル曲&カップリング曲を追加してリマスタリング再発してくれればよかったんじゃないかなと。でも See-Saw っつったらアニソンつーことになっているから CD を売ることを考えると無名時代の作品だけ出しても採算取れないだろう的なことでこうなったんだろういやいやメンバーのご本人さん方にしても大昔の青臭い曲だけを出されることは不本意で、『See-Saw のすべて』を改めて出すならこんなかたちにもなる。

CD でなくとも Disc1 や 2 もちゃんとダウンロード配信してくれればこんな無駄愚痴並べる必要もなく、「買った。聴いた。良かった。」で終われた話。